函館市宇賀浦町の漁火通り沿いにある、福田海産株式会社。1987年創業の同社で現在代表を務めるのは、函館市出身の福田久美子さん。市内のホテルや飲食店へ海産物を卸すほか、店舗では、お土産品や地元で捕れた海産物を販売しています。
長く海産物の卸業をしている中で、大きな転機が訪れたのは2021年。函館の若手漁師が「ハコダテフィッシャーマンズマルシェ」と題して魚介類の産直市を開催する、という記事を読んだことです。地元の若手漁師が集まり、イベントを企画したことに衝撃を受けた福田さんは、気がつくと自分にできることはないかと主催者に連絡を取っていたそうです。マルシェの運営に関わり、実際に漁師の方々と話すことで、初めて函館の漁業の現状を知ることになります。コロナの影響も重なり、どれだけ魚が捕れたとしても全てが市場に出回ることはなく、多くの魚が廃棄されているということです。このままでは魚に価値が付かず、漁師の方々が厳しい状況に置かれてしまいます。
同社では、課題解決のため、朝捕れた新鮮な魚を、手作業ですり身やフライ用に調理、加工しています。自分たちの手で、地元の魚を破棄することなく少しでも価値をつけたいと新商品開発にも力を注ぎます。ハコダテフィッシャーマンズと福田さんの取り組みを知り、その思いに賛同する人も少しずつ増えてきました。「せっかく海に囲まれた町で生活しているのだから、海産物はもちろん、漁師の方を身近に感じてほしい」と、周りの人を巻き込みながらマルシェ企画やオンライン販売会などを行うことで、よりおいしく、より楽しい地産地消に挑戦しています。
今後は、実際に魚をさばいたり、生の魚に触れることができる料理教室を開催したいと意気込みます。「笑う門には福が来る」を座右の銘に掲げる福田さんは笑顔を大切にしています。地元が抱える問題は大きいかもしれないが、自分も楽しみながら、参加者も楽しいイベントを企画し、函館の海産物と漁業の魅力を伝え続けたいと、満面の笑みで私たちにその思いを話してくれました。
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道南を中心にこだわりの食品を集めた通販サイト「北海道地元市場」を運営するロカラ(函館市鍛治1、中川真吾社長)のスタッフが各地のつくり手たちのもとに足を運び、生産者の思いをまとめます。(毎月第3日曜日掲載)