函館市の旧南茅部町地区は、南かやべ漁協によるとコンブの国内生産量の約15%を占める一大産地です。尾札部浜で捕れる白口浜真昆布は献上昆布とも呼ばれ、身が厚く、上品で澄んだだしが取れると評価され、最高の品質を誇ります。また、南茅部はコンブの養殖に日本で初めて成功した地でもあります。2018年に創業したマルジョウ多喜屋は、豊かな漁場がある南茅部で、マコンブの価値を高めるために、商品開発・販売を行っています。
同社の商品開発や販売などを一手に担うのが営業販売部長の坂本修一さん。幼少期から漁を手伝うなどコンブを身近に感じられる環境で育ち、高校卒業後は一度南茅部を離れ、食や水産とは全く違う環境で働いていましたが、大好きな南茅部でコンブに関わる仕事がしたいと帰郷。南茅部では、最高級の品質のコンブが水揚げされ、消費者に届けるまでの処理技術も超一流にもかかわらず、本州でメジャーな北海道のコンブは、羅臼産や日高産のもの。そんな現状を見て、もっと南茅部のコンブの魅力を届けたいと思い、父と共に同社を創業しました。
同社が手がける「献昆一滴」は尾札部浜で2年かけて育てた白口浜マコンブをぜいたくに使用した根コンブだしです。コンブの根や葉を特殊な製法で加工することによってまろやかな口当たり、上品さ、スッキリとした後味を実現しました。発売から1年足らずで東京の百貨店などでも取り扱われ、その品質の良さから全国の料理人からも注目を浴びています。どんな料理にも合わせることができる万能調味料として活躍する同商品は、だしとして使うのはもちろん、サラダのドレッシングやステーキソース、刺し身につけるしょうゆ代わりに使うのもお薦めとのこと。
今後の展望について坂本さんは「自らが率先して、いろいろなことに挑戦していく。そうすることで、町全体にやるべきことはまだまだ残っていることを感じてもらいたい」と話します。今後は「献昆一滴」シリーズの開発や、コンブを使った化粧品や健康食品を開発していく予定です。大らかな雰囲気の坂本さんですが、南茅部の将来について話す際は、真剣なまなざしで未来を見据えていました。
◇
道南を中心にこだわりの食品を集めた通販サイト「北海道地元市場」を運営するロカラ(函館市鍛治1、中川真吾社長)のスタッフが各地のつくり手たちのもとに足を運び、生産者の思いをまとめます。(毎月第3日曜日掲載)