函館市万代町の国道沿いに1949年8月創業、今年で72年を迎える老舗菓子店、はこだて柳屋があります。同社は「函太郎せんべい」を前身に、現在までの長い間、函館市民に親しまれてきました。出来たてのお菓子を味わってもらいたいという思いで、創業より一貫して、保存料を使用しない菓子づくりを行なっています。
はこだて柳屋では、これまで「いかようかん」や「ロマネスク函館」といった数々の代表作を生み出してきましたが、商品づくりの根底にひとつの思いを持っています。「函館に人が集まるきっかけになるお菓子をつくりたい」―そう話す専務取締役の若杉隆之さん。大学時代を札幌で過ごし、商品開発・イベント企画を行う会社で研さんを積み、その後、家業である同社を継承する決意で函館へ帰郷します。
入社後も、前職での経験を生かし、さまざまな企画の立ち上げを行います。明治初期を時代背景に、函館にゆかりのある有名キャラクラーとのコラボレーション商品、七飯町産のりんごワインを使用した「ロマネスク函館 林檎パイ」の開発では、お土産として全国の人の手に渡ることを想像しながら、函館を知るひとつのきっかけを作れるように、素材選びからお菓子のフォルムに至るまで徹底してこだわっているそうです。
北海道には、質の良い素材が豊富にある一方で、いつでもどこでも、コンビニやスーパーで気軽に手に入る時代となりました。また函館には、たくさんの土産品がありますが、中には函館で作られていない商品も多くあり、若杉さんは、地元企業としてのプライドを持ち、他社との差別化を図るために、商品の持つ背景や歴史、地元素材の魅力などといった価値を生み出し、菓子づくりにおける「物語」を大切にしているそうです。
その「物語」と、同社の地元函館にかける熱い思いがリンクし、はこだて柳屋の魅力ある菓子は、今日も誕生しています。「函館といえば!という菓子を、函館の企業である私たちが、これからも誇りを持って作っていきたい」と若杉さんは力強く話します。
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道南でつくられるこだわりの食品を集めた通販サイト「道南地元市場」を運営するロカラ(函館市鍛治1、中川真吾社長)のスタッフが各地のつくり手たちのもとに足を運び、生産者の思いをまとめます。(毎月第3日曜日掲載)