津軽暖流と沿岸親潮(寒流)が交わり、噴火湾を望む漁業資源の豊かな町、鹿部町に一印高田水産はあります。前浜で獲れたタラコを中心に、ボイルべビーホタテや棒タラの製造など水産加工業を営む同社の前身は、元々漁師であった曽祖父、祖父に始まります。高田さんの父である先代が、1967年に創業し、今年で54年を迎える企業です。
主力商品のタラコは、鹿部市場で自ら目利きをし、地元噴火湾産の鮮度の良いスケソウダラを使用、その日にさばける分だけを仕入れ、その日のうちに塩漬けにしていきます。同社は2021年1月、大きな転換期を迎えます。これまで主力の人気商品「雪たらこ」をリニューアル。合成着色料を使用しない、製品開発への舵を切りました。発色剤の合成着色料の代わりに紅麹(こうじ)を使用することで、自然由来の発色に仕上げていきます。これまで先代がつないできた「一印高田水産のたらこ」のブランドを維持しながらも、自分たちの納得する品質を作り上げるのに2年の歳月を費やし成功させます。
「多くの失敗も経験しましたが、おいしい物を作ることだけではなく、どんな人にも安心して食べてもらえるように商品づくりをしていきたいです」、そう話す高田さん。
高田さんの挑戦はそれだけはありません。地元の小板工房と協働で、鹿部町のスケソウダラをフライにし、鹿部産特製明太子タルタルソースをかけた「しかべのスケソバーガー」の販売を手掛けるなど、斬新なアイデアで果敢にチャレンジしています。
地元のものを使って、地元の漁師に認めてもらえること。商品を通じて、地元を知ってもらい、地元に来てもらうこと。噴火湾と漁師に敬意と感謝を込めている高田さんらしい考え。「鹿部町が子どもたちにとって自慢の古里だと思ってもらえる町にしたいです」と話します。
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道南でつくられるこだわりの食品を集めた通販サイト「道南地元市場」を運営するロカラ(函館市鍛治1、中川真吾社長)のスタッフが各地のつくり手たちのもとに足を運び、生産者の思いをまとめます。(毎月第3日曜日掲載)