函館市民なら誰もが知っている老舗レストラン五島軒。初代店主若山惣太郎、初代料理長五島英吉の2人の人物により「ロシア料理とパンの店」として1879(明治12)年に創業されました。函館の歴史と洋食文化を今に伝え、真心のサービスをモットーに地元函館に愛され続けて2021年4月に142周年を迎えます。
五島軒ではレストラン業としてはもちろんのこと、商品づくりにおいても地元北海道素材を積極的に採用しています。私たちになじみの深い〝五島軒のカレー〟は、北海道産のポーク、じゃがいも、にんじんを使用した優しい味わいが人気のメニューですが、レストランで調理する際と変わらない製法で商品化された人気のレトルトカレー「函館カレー」シリーズのほか、「猿払ホタテバターカレー」や道産レッドビーツを使用した「北海道ボルシチ」など、これまで数々の地域食材のコラボレーションメニューを展開してきました。
五島軒が北海道素材にこだわる理由は〝品質の良さ〟だけではないと言います。「私たちができることは、商品を通じて北海道の食を全国に発信することです」。そう話すのは、創業者若山惣太郎の血を受け継ぐ、専務取締役の若山豪さん。長い歴史の中で五島軒が築いてきた、素材に対する製造へのこだわりを感じることができます。
近年では新たな取り組みにもチャレンジしています。2016年にこれまでの商品パッケージを一新した自社が所蔵する錦絵を箱にあしらった「ブーケ」シリーズのリリースや、地域活動にも積極的に参加しています。観光資源に恵まれたここ函館も人口減少が進む一方で、今の状況をただ見過ごすわけにはいきません。古き良き〝モノ〟をしっかり受け継ぎながら、時代とともに変化していかなければならないと話します。
「たとえ一社の力は弱くても、数社が集まることで予想を超えるパワーを発揮します。団塊世代からバトンタッチをされた我々世代が、これからもっと横のつながりを強くして、函館という街全体を良くしていきたいです」と若山さん。142年の歴史を背負う若きホープの挑戦はこれからも続きます。
◇
道南でつくられるこだわりの食品を集めた通販サイト「道南地元市場」を運営するロカラ(函館市鍛治1、中川真吾社長)のスタッフが各地のつくり手たちのもとに足を運び、生産者の思いをまとめます。(毎月第3日曜日掲載)