認知症治療の非薬物療法によるアプローチ
認知症とは、脳の機能低下により引き起こされる症状の総称で、3大認知症はアルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症です。認知症の治療では薬剤の開発は進んでいますが、いまだ完治には至らず、早期発見・早期治療による症状進行の抑制、介護負担の軽減を目指しています。
薬剤では、アリセプト、レミニール、リバスタッチパッチが記憶や思考を司る神経伝達物質(アセチルコリン)の分解を抑制し症状を抑えます。メマリーは、脳内の興奮物質であるグルタミン酸の作用を抑え、脳神経の損傷を抑える効果があります。一方、非薬物療法は活動や運動により脳の活性化を促し、身体や認知機能を維持する目的で行われます。非薬物療法にはいくつか種類がありますが、今回はバリデーション療法についてお伝えします。バリデーション療法は、日本に限らずアメリカやスウェーデンなどを中心に1万を超える施設で取り入れられています。
認知症により記憶や体力などを失っても「感情」だけは失うことがないと言われており、バリデーション療法は感情に焦点を当て、認知症の人の持つ世界に共感し受容した態度で接するコミュニケーション技法です。例えば、認知症の人が「帰りたい」と訴えたとき「帰れません」と否定的な接し方をすることで混乱し、落ち着かない状況に陥ることが予測されます。バリデーション技法では「帰りたいのですね」と傾聴した姿勢の声掛けと共感を行い、「どうして帰りたいのですか?」とオープンクエスチョンで問い掛けることで、「子どもに会いたい」と答えを出して下さる場合が多々あります。そのような場合「会いたいのですね」と共感し「帰りたい」の言葉に隠された本当の気持ちを理解することが大切です。そして、結果的に家族に会っていただくための支援に繋げることができ、結果的に帰宅願望が少なくなり認知症の人が安心した生活を送るための支援ができるようになります。
(ハコラク 2022年10月号掲載)
亀田北病院
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