医療被ばく
被ばくと聞くと良い印象を持つ方はいらっしゃらないのではないでしょうか。しかし、放射線は非常に身近な存在で、呼吸や食物を摂取するなど普段の行動、つまり日常生活を過ごすだけで毎日わずかながら被ばくしています。これは自然放射線による影響で、空気や大地、さらには宇宙からによるものであり、絶対に被ばくから避けて生きていくことはできません。
では医療被ばくはどうでしょうか。これは医療機関で放射線を用いた検査や治療を行った場合のみにする被ばくです。検査や治療、診断に必要な医療分野ですが、不安に思われることが多い分野ではないでしょうか。まず、医療現場において用いられる放射線は被ばくによる影響よりも、もたらされる便益が上回ると考えられる場合と、可能な限り被ばく量を低くすること、個人の線量限度を超えないこと、以上の3つが守られており、これを医療被ばくの3原則と呼んでおります。診療放射線技師は医療現場において医師からの指示の下に検査や治療に携わるだけではありません。医療被ばくの3原則に基づき、医療被ばくを抑え、見やすい画像を提供することも診療放射線技師の仕事です。
以前、日本での医療被ばくは世界レベルでトップクラスだという記事を目にしたことがあります。正直に申し上げると本当です。しかしこれは日本の医療における放射線分野が世界から見て遅れているからという訳ではなく、日本のCT装置普及台数がトップクラスだからというのが理由です。日本は身近なところにCT装置があり、そして検査を受けられるトップクラスの医療環境が整っていると言い換えることができるのではないでしょうか。現在では少ない被ばく量でも画質を良くする技術や装置などの研究が急速に進んでおります。また、日本では2015年より医療被ばくを最小限に抑え、最適化するという診断参考レベルが設けられました。
放射線検査に関して不安なことや気になることなどがございましたら、お近くの診療放射線技師にお尋ねください。(ハコラク 2025年3月号掲載)