腹部超音波検査と脂肪肝
腹部超音波検査(腹部エコー検査)とは、超音波を出す機器をお腹に当てて臓器の状態をみる検査です。目的や症状などでみる臓器は異なりますが、肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓、消化管などに異常がないかを見ています。
肝臓の異常で頻度が高いものに脂肪肝がありますが、エコーで脂肪肝を見ると正常の肝臓と比べて脂肪肝は超音波の反射が強いため肝臓が白く映ります。脂肪肝、肝炎から線維化が進み肝硬変になると肝臓の表面がでこぼこに映ります。脂肪肝にはアルコールをさほど飲まなくても脂肪肝や肝炎になってしまう非アルコール性脂肪性肝疾患があります。近年、非アルコール性脂肪性肝疾患が増加しており問題視されています。
過剰飲酒がなく代謝異常があるものを代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)、MASLDに該当していて肝炎になった状態を代謝異常関連脂肪肝炎(MASH)といわれています。肥満、糖尿病、脂質異常症などの代謝異常があると脂肪肝になりやすく、負担が掛かってくると肝臓の細胞が壊れて炎症を起こします(肝炎)。壊れた肝細胞の再生が間に合わなくなると線維化がおきます。MASLDやMASHは線維化が進行するといわれていて、線維化の進み具合に個人差はありますが、進行すると肝硬変、さらに肝がんになる可能性が高まります。そして、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性心血管疾患や肝臓以外のがんなど全身のさまざまな病気を発症するリスクも高くなります。非アルコール性脂肪性肝疾患の発見や経過観察に腹部超音波検査は有用で、脂肪肝の有無や程度、肝炎や肝硬変の評価や経過観察、肝がんになっていないかを見ることができます。
肝炎や肝硬変の初期でもほぼ症状はないので病気に気付きにくいです。症状がない方もMASLDやMASHと診断された方も腹部超音波検査やCTなどの画像検査や血液検査を定期的に受けて肝臓の状態を知っておくことが大切です。
(ハコラク 2025年2月号掲載)