抗がん剤治療と副作用
抗がん剤治療は細胞の増殖を防ぐ薬剤を用いた治療法で、がんが増えるのを抑えたり、成長を遅れさせたり、転移や再発を防いだり、転移しているかもしれないところを治療するために行います。がん種や進行度に応じて1種類の薬剤で行うこともあれば、作用の異なる薬剤を組み合わせて行うこともあります。点滴や注射で行うイメージがあるかもしれませんが、錠剤やカプセル剤など飲み薬で治療を行うこともあります。
抗がん剤の多くは、活発に増殖する細胞に対して作用しやすいという特徴があり、がん細胞だけではなく、正常な細胞の中にも影響を受けやすいものがあります。映画やドラマなどでよく描かれる「吐き気」「髪の毛が抜ける」というのは、消化管細胞や毛根細胞などが抗がん剤の影響を受けることで副作用として生じてきます。また、全ての抗がん剤で「吐き気」「脱毛」が起きるわけではなく、副作用の症状や程度は抗がん剤の種類によって異なります。自覚できる症状以外にも腎臓・肝臓・骨髄機能など検査によって分かる症状もあります。副作用対策としては、抗がん剤の投与量の調整や副作用予防の薬剤の使用、生活上の工夫で症状を軽減できるものなどがあります。
近年では、抗がん剤の進歩や副作用に対する治療、症状を緩和する方法の進歩によって、通院で治療することも増えてきています。治療の中で入院が必要となる副作用症状が発現してくる場合もあるので、患者さん自身で病院への連絡を判断しなければならないこともあります。そのため、患者さん自身やご家族が抗がん剤の特徴や注意すべきことをしっかりと把握されることが重要です。治療に携わる医療スタッフと、しっかりとコミュニケーションをとり、情報共有することで副作用症状の予防、早期対応、治療の継続に繋がります。病院にはさまざまな職種が連携し、チームでサポートする体制があります。「治療だからしょうがない」「全て先生におまかせ」だけではなく、気になっていることは相談するようにしましょう。
(ハコラク 2024年11月号掲載)