誤嚥性肺炎と口腔ケア
誤嚥性肺炎は高齢者が発症する肺炎のうち8割以上を占め、現在日本人の死因の6位にもなる命に関わる重篤な疾患です。高齢化社会において今後さらに発症の増加も見込まれるため、積極的な予防が必要となります。 食べ物や飲み物を飲み込むことを「嚥下」といい、「嚥下」の動きが正しく働かずにむせたり上手く飲み込むことができなくなることを「嚥下障害」といいます。また「嚥下障害」があると、飲み込んだものが食道ではなく気管に入ってしまうことがあり、これを「誤嚥」といいます。誤嚥したときにお口に細菌が多くあると、飲み込んだ物、唾液と一緒に細菌も肺に入ることで誤嚥性肺炎を発症します。
お口の中を清潔にし、細菌数が少ない状態を保つことで、誤嚥をしても誤嚥性肺炎を発症するリスクを抑えることができます。自分で上手に歯磨きができない方や要介護高齢者の方は、毎日のお口の中のケアで細菌を取り除くことがとても重要になります。口腔ケアは、お口の中全体を観察して状態を把握し毎日変わりないか見ることが大切です。虫歯や動いている歯があったり、入れ歯をうまく使えない、お口の中に痛みがあるなどの症状がある場合は専門医を受診しましょう。
実際の口腔ケアは口腔内用のスポンジブラシやガーゼで優しく頬や上あごの粘膜の清掃をし、柔らかめの歯ブラシで一本ずつ歯の並びや形に合わせて順番に歯磨きをします。舌も細菌が付き白くなりやすいため歯ブラシや舌ブラシで奥から手前に数回磨きます。入れ歯を使っている方は必ず入れ歯の洗浄も行います。可能な方はマウスウォッシュなどでうがいをするとより効果的です。またお口の中が乾燥していると細菌の繁殖やケア時の痛みにもなるので口腔ケアの前後には保湿剤の塗布が必要になります。
毎日の口腔ケアは口腔内の細菌数を減少させ、誤嚥性肺炎の予防や全身の健康にもつながる重要な役割をしているのです。
(ハコラク 2024年11月号掲載)