生命誕生と向き合う仕事 ~不妊治療の現場から~
あなたがお母さんのおなかにいた時どんな姿だったかご存知ですか?と聞かれて、ほとんどの方は、胎児が頭に浮かぶと思います。しかし胎児の前はどんな姿か…卵です。卵子と精子が受精し、受精卵が分割を繰り返し、まるでヒヨコの孵化のように私たちも卵の殻を破ってお母さんの子宮に着床します。私たち胚培養士は、その受精卵=赤ちゃんの素のお世話に携わっています。
現在、日本で生まれているお子さんの5人に1人は何かしらの不妊治療を経て誕生しており、体外受精においては約20人に1人と言われています。その割合から、意外と不妊治療や体外受精を身近に感じませんか?
胚培養士は、普段患者様の前に出てお話する機会はなかなかありませんが、培養室の中で日々患者様の卵、精子と向き合っています。卵子を採取してから受精させ、3日から6日培養を続けます。その間に取り違えがないよう、また、受精卵が人為的操作によって悪い状態にならないよう毎日緊張感をもち、細心の注意を払いながら仕事に携わっています。とてもプレッシャーがかかりますが、その分達成感もとても感じられる、やりがいのある職業です。お世話した卵さんが赤ちゃんになってご対面できたときの感動は、本当にこの上ないものです。
不妊治療は人工的に赤ちゃんを授かるというイメージを抱く方もいらっしゃるかもしれません。しかし卵さんが自身の力で頑張って受精し、生命として成長していく姿を目の当たりにしていると、不妊治療は不妊を治すのではなく、妊娠に向けてのお手伝いだと感じています。言い換えれば、不妊治療は万能ではありません。成功する確率は、治療開始が早ければ早いほど上がります。もし、お子さんを希望される場合には、早いうちに専門施設へ足を運ぶことをお勧めします。
(ハコラク 2019年10月号掲載)
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