生殖医療の保険適用を踏まえ
改めて見直す一般不妊治療
産婦人科領域での今年最大のトピックといえば、体外受精・胚移植(IVF-ET)を含む生殖補助医療に保険診療が可能となったことでしょう。これにより多数のIVF患者さんの経済的負担が減った一方で、年齢(43歳未満)・回数(年齢により6回または3回)制限に該当する方や保険適用外の検査(着床前診断など)を併用する方は全額自己負担のため負担増となった方もいるようです。
一般不妊治療の分野でも、新たにタイミング法と人工授精(AIH)が保険適用になりました(施設基準あり)。タイミング法は一般不妊治療管理料として説明・同意書の交付を条件に3カ月で250点(=2500円)、AIHは1820点(=18200円、ともに自己負担3割)で、当院でも負担が軽くなりました。年齢制限もありません。タイミング法はアプリでやっている方も多いですが、アプリは過去の月経周期より推定した次の月経初日から排卵日を算出します。医療機関で行うタイミング法は超音波で卵胞計測と排卵検査薬を併用しますのでより正確です。AIHは洗浄濃縮した精子を専用チューブで子宮の中に入れるという治療です。その先は自然妊娠と同じ過程をたどるので、卵管や骨盤内に不妊原因のある方には無効の場合もありますが、性交・射精障害や子宮頚管粘液の不良、精子との相性が悪い場合などは体外受精と同等の効果があります。
原因不明の不妊に対しては取りあえず試してみるという感じですが、保険適用=標準治療ということですので現在積極的に取り組んでいます。IVFに進む時期ですがAIH6回後が一般的です。これはAIHで妊娠するカップルの9割が6回までに妊娠するという有名なデータに基づいていますが、当院でもAIH4回で妊娠不成立ならステップアップをすすめています。保険適用で生殖医療の敷居が下がったのは喜ばしいことですが、不妊原因によっては負担の少ない一般不妊治療に目を向けてみてはいかがでしょうか。
(ハコラク 2023年1月号掲載)
略歴
平成元年、北海道大学医学部卒業後、北大病院(不妊症グループ)および関連病院出向。平成10年、同大学院医学研究科修了、ヒト排卵機構の研究で博士(医学)の学位取得。平成11年、函館中央病院産婦人科医長、平成20年、同科長、平成25年、産婦人科ほんどおりクリニック開院。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。
産婦人科 ほんどおりクリニック
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