不育症とは
不育症とは「流産あるいは死産が2回以上ある状態」と定義され、生児獲得の有無や流産または死産が連続しているかは問わないとされています。流産は妊娠最大の合併症であり、約15%に起こり女性の加齢とともに増加し40歳代では40%にも上り、90%以上は妊娠10週未満の初期に起こります。
不育症の4大原因には抗リン脂質抗体症候群、子宮形態異常、カップルの染色体異常、胎児の染色体数異常などがあります。抗リン脂質抗体症候群は自己抗体により血が固まりやすくなり血栓症や流産・死産を起こす病気です。産科の抗リン脂質抗体症候群は治療法が確立された唯一の原因であり、特に10週以降の原因不明流産・死産、3回以上の初期流産などがあった場合にはこの疾患を疑います。そして適切に検査を行い、次回妊娠時に低用量アスピリン・ヘパリン療法を行います。
先天性子宮形態異常は中隔子宮、双角子宮、単角子宮、重複子宮などが不育症の原因となりますが、経腟超音波検査やMRIなどにより診断します。中隔子宮が最も頻度が高く子宮鏡による中隔の切除などが行われてきましたが、報告では手術のメリットがある傾向はありました。
カップルの染色体異常は、ご夫婦のどちらかに染色体異常があると不育症になることがあります。不育症で問題となる染色体異常は転座などの染色体構造異常です。胎児の染色体数異常は、流産の原因の中で最も頻度が高く、数が余分にあるトリソミーが知られています。ただし流産絨毛の染色体検査は行われないことが多いため、原因として確認されていないといった問題があります。
流産した患者さんは、自分を責めたり、気分が落ち込んで抑うつ状態になったりする方がいらっしゃいます。しかしながら、多くは胎児の異常で起こり不摂生や過失で起こるわけではありませんし、流産の原因も正しくは知られていません。いずれにせよ次回の妊娠に対する不安をお持ちの場合は、妊娠前に産婦人科医に相談することをおすすめします。
略歴
昭和62年、秋田大学医学部卒業後、九州大学婦人科学産科学教室へ入局。メイヨークリニック留学を経て、東京女子医科大学産婦人科学講座へ入局し准教授を務め、附属足立医療センターで教授就任。平成24年から、秋山記念病院(現・秋山ウィメンズ・ARTクリニック)非常勤医師。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医。(ハコラク 2025年3月号掲載)