後鼻漏の原因慢性上咽頭炎について
鼻からのどに鼻水が落ちる感じ、いわゆる「後鼻漏」の症状はありませんでしょうか。後鼻漏は慢性上咽頭炎、アレルギー性鼻炎などによって出る症状です。「上咽頭」とは鼻の奥・のどの上の部位であり、慢性上咽頭炎とは、そこに慢性的な炎症が起きている状態です。原因としては①かぜ・コロナ感染後、コロナワクチン接種後遺症で炎症が残存②アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎による鼻漏が上咽頭に流れ、口呼吸により鼻咽頭の環境が悪くなる③逆流性食道炎で胃酸による粘膜障害が起こることなどが挙げられます。汚い空気の中での長期間の仕事、喫煙なども影響することがあります。
まずは内服薬での加療を開始しますが、上咽頭炎の症状は治りづらいことが多いです。そこで行うのが「上咽頭擦過療法」です。
上咽頭擦過療法とは塩化亜鉛溶液を染みこませた綿棒を、鼻や口から直接上咽頭にこすりつけ刺激をするだけのシンプルな方法です。若干の痛みを伴うため、処置前には麻酔薬塗布による局所麻酔を行います。
塩化亜鉛は患部の炎症の鎮静化効果があるため、上咽頭炎が原因の後鼻漏やのどの違和感の改善が期待できます。重症度や罹患期間などの個人差はありますが、1~2週に1回の通院、計10回程度の治療で効果を判定します。薬剤を塗布した後は数時間ヒリヒリします。上咽頭に炎症がある場合にはヒリヒリ感や出血が多く、なおかつその後治療が効果を示すといわれています。炎症がおさまるに従い、ヒリヒリ感や出血は減っていきます。もちろん保険適応であり、高額な治療費はかかりません。
「日常生活に支障がない(本人が気にならない)状態」を治療のゴールと考えています。発症して間もない後鼻漏は、適切な治療と養生により多くの場合で治癒しますが、慢性的な後鼻漏(特に発症して1年以上経過)は、ほかの慢性疾患と同じように「治る場合もあるが、治らない場合もある」のが現状です。後鼻漏が気になる方は一度耳鼻咽喉科を受診してみませんか。
(ハコラク 2025年2月号掲載)
略歴
平成20年、山形大学医学部卒業後、函館五稜郭病院の研修医を経て、札幌医科大学付属病院、KKR札幌医療センター、帯広厚生病院、帯広協会病院などで勤務。函館五稜郭病院耳鼻咽喉科科長を務め、令和6年5月、みはら耳鼻咽喉科を開院した。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会耳鼻咽喉科専門医。