パニック障害について
強い恐怖感・不安感が急激に生じて、しばらくして軽快する発作を認める人がいます。これをパニック発作と言います。どれくらいの強い恐怖かというと、ご本人にとっては「このまま死んでしまうかもしれない」と感じる恐怖が突然襲ってきます。このため相当強い恐怖感であると言えます。
パニック発作を経験すると、自然と予期不安が強まります。予期不安というのは過去にパニック発作が出た状況が近づくと、「また同じ不安が出てくるのではないか」と怖くなったりする症状です。パニック発作が出そうな場所やパニック発作が実際あった場所、例えば「せまい所」「人混みや人の列」「広い場所」「公共交通機関」といった場所を恐れ、特定の場所を避けて行動することもあります。パニック障害とはこのようなパニック発作を心配し、パニック発作が起きる状況を回避するように行動を変えてしまう障害のことを言います。また「逃げられない状況や自分でコントロールできない状況にある」と感じるときに強い恐怖感を抱く、広場恐怖症と合併しやすいと言われています。
パニック障害が生じるはっきりとした原因は不明ですが、現代の医療では脳の機能的な異常があると言われています。遺伝的な要因と環境的な要因が重なり発症すると言われていますが、環境的な要因のほうが大きいと言われています。治療は日常生活で起こるパニック発作を落ち着かせるために、主に抗うつ剤を使用します。抗うつ剤は、セロトニンの働きを高めて、不安を軽減することで症状の安定を図ります。
「なるべくならお薬を使わずに治療したい」と希望される方もいますが、強迫性障害といった不安を生じるほかの病気に比べると、パニック障害はお薬の効果が期待できます。パニック障害はほかの精神疾患と比べて回復しやすい病気ではありますが、女性の場合は再発しやすく、再発率も高いと言われています。お薬を上手に使用し、精神療法も継続しながら治療を続けていくことが大切です。
(ハコラク 2025年2月号掲載)
略歴
平成15年、北海道大学医学部卒業後、同大学病院精神科で初期研修し、八雲総合病院、倶知安厚生病院、国立花巻病院、函館渡辺病院で精神科医師として勤務。令和3年、桜町メンタルクリニック開院。日本精神神経学会精神科専門医。