みんなで考える先天性疾患と出生前診断
これから出産を迎える方であれば、誰もが赤ちゃんが健康に産まれ育ってほしいと願っていることでしょう。しかし、人間が生涯で何かしらの病気になるように、赤ちゃんも生まれつきの病気を持っていることがあります。それらは先天性疾患と呼ばれます。先天性疾患は産まれてくる赤ちゃんの3~5%に見られます。先天性疾患の例では先天性心疾患や口唇裂、多指症、染色体疾患であるダウン症などがあげられ、非常に多くの疾患が存在します。ご両親に何も病気がなくても赤ちゃんが先天性疾患を有することがあります。
産まれる前に先天性疾患を調べることを出生前診断と言います。とくにダウン症や18トリソミー、13トリソミーといった胎児染色体疾患を対象とした遺伝学的検査を狭義では指すこともあります。現在では精度が非常に高い、いわゆる新型出生前検査である非侵襲性出生前遺伝学的検査「NIPT」が普及し、函館市でも認証を受けた施設で検査が可能となりました。
出生前診断は誰しもに必要な検査ではありませんが、赤ちゃんが産まれる前に先天性疾患があるか知りたい、健康な赤ちゃんを産みたい、さらには健康な赤ちゃんなら産みたい、そう考える方もいるかもしれません。しかし出生前遺伝学的検査の対象である胎児染色体疾患は先天性疾患の1/4程度を占めるにすぎません。よって赤ちゃんの病気を知りたいという希望への回答へはならないかも知れないのです。
もし産まれてくる赤ちゃんに心配なことがあれば、まずは旦那さんやご家族、そしてかかりつけの産婦人科医師や助産師さんに相談しましょう。医療者は出生前診断をすすめる立場でも否定する立場でもありませんが、妊婦さんに寄り添った正しい情報提供を行ってくれるはずです。臨床遺伝専門医など専門的なトレーニングを受けた医師からは遺伝カウンセリングを受けることもできます。赤ちゃんの大切な未来について、一緒に考えていきましょう。
(ハコラク 2022年11月号掲載)
略歴
平成19年、札幌医科大学医学部卒業後、NTT東日本札幌病院、札幌医科大学附属病院、日鋼記念病院、留萌市立病院、函館五稜郭病院、市立釧路総合病院勤務を経て、平成27年から市立函館病院に勤務。平成31年、産婦人科科長、令和2年に産婦人科主任医長に就任。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医。
市立函館病院
函館市港町1-10-1
☎0138-43-2000(代)
https://www.hospital.hakodate.hokkaido.jp/
■診療科目/消化器内科、呼吸器内科、循環器内科、消化器外科
心臓血管外科、精神神経科など全30科目
■外来診療受付時間/8:30~11:30
午後は予約患者のみ
※診療科によって異なるので詳しくは問い合わせを
■休診日/土・日曜・祝日
がん相談支援センター開設時間/8:30~17:00
(土・日曜、祝日を除く、内線3289)
なんでも相談コーナー開設時間/8:30~17:15
(土・日曜、祝日を除く、内線4112)