磁性アタッチメント義歯
皆さん磁石が付いた義歯をご存じですか。以前からある物ですが昨年9月から保険診療でも適用されることになっていて、症例によっては大変有用な方法となる場合があります。
歯が弱いため差し歯にはできず、義歯のバネをかける設計が無理な時でも、根の上に磁性ステンレスのふたを付けて、それに接する義歯内面に磁石を組み込むことで、両者がくっつきます。この構造物は磁性アタッチメントと呼ばれます。歯の根だけでも残すことで義歯の沈みに抵抗する支えになります。根の周りに骨が保持され、歯根膜と言う歯のセンサー役をする構造も温存される利点があります。その残っている根に磁性アタッチメントを適用することで、義歯を口の中で維持するという利点が追加されます。しかもその維持力は通常の義歯のバネに比べ弱りづらく、歯に有害な側方の力が少なく歯に対して優しい装置と言えます。義歯の外側への金属の露出がなく見た目が良くなり、お年寄りや手が不自由な人でも義歯の出し入れが容易になります。
ただMRI検査を受ける時は義歯を検査室外で外す必要があります。口に入れたまま撮影されると磁石の磁力が低下します。口や咽頭などの組織をMRI検査する場合は、根に付けたステンレスのふたの部分をあらかじめ外す必要があります。MRIの画像がその部分近くで乱れるためです。外したところは後日修理することになります。残した根の上部では歯の形が無くなっていますが、根があるのを忘れずに、より丁寧に磨くことが大事です。汚しておくと歯の周りの歯肉で炎症を生じてしまうからです。
磁性アタッチメントはどんな義歯にでも適用されるわけではなく、無くなった歯の数や部位などまた歯の状態により適否が判断されます。義歯の下に歯の根が残っている方は、磁性アタッチメント義歯が可能なのか相談してみてはいかがでしょうか。
(ハコラク 2022年7月号掲載)
略歴
昭和59年、函館中部高等学校卒業。平成2年に北海道大学歯学部を卒業後、札幌市内の歯科を経て、平成17年から吉田歯科口腔外科に勤務。
吉田歯科口腔外科
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