個性ってなに?
私たちは、さまざまな色や音、匂い、味、形に囲まれて生きています。環境にある全ての事物は、感覚器官を通して体に入ってきます。けれども、自分の感覚を1つ残らず意識しているわけではありません。上手に取捨選択して、必要な感覚だけを取り入れています。例えば、雑踏の中で友達と会話するとき、目に入るさまざまな色や動き、耳に入るさまざまな音から、相手の顔と声のみを取り出して認識し意識化しています。「意識」は膨大な量の感覚刺激の洪水に溺れないように、必要なものだけ取り入れ、ほかは捨てるフィルターの役割をしているのです。
赤ちゃんは驚異的な知覚の力を持っています。例えば、世界中のあらゆる国の言葉を聞き取る力を持っています。大人では難しいR音とL音の区別も可能です。また、日本人の顔と同じように、白人や黒人の顔を見分けることができます。でも、大人になった私たちは、日本人の顔を見分けることができるのに、外国人、特に白人や黒人の顔を見分けるのが困難になります。大人になるに従い、自分のまわりの文化に合わせて、認識のシステムがカスタマイズされていくようです。生まれた時には、全ての刺激に対応できるように脳の神経のシステムが作られているのに、意識のフィルターを通して、感覚刺激を取捨選択していくうちに、よく使われるシステムだけが残され、不要なものは捨てられていくのです。そうして、それぞれの異なった環境と異なった経験から、その人独特の認識のシステムが作られていきます。それが私たちの「個性」です。
人は同じ出来事に出合っても、それぞれ別の感じ方、考えを持ちます。情報の取捨選択の基礎となる認識のシステムが、生まれ育った環境により異なった形に構築されていくからです。そのカスタマイズは、赤ちゃんの時から始まっています。私たちは、生まれた時から、たくさんの人と出会い、たくさんの出来事と出合います。その一つひとつが、その人の個性を作り上げていく貴重な体験となるのです。
(ハコラク 2022年 3月号掲載)
略歴
昭和59年、北海道大学医学部卒業。同年4月から北海道勤医協札幌病院に8年間勤務後、静岡てんかん・神経医療センター小児科、道南勤医協稜北病院小児科医長を経て、平成21年9月、はるこどもクリニックを開院。平成23年12月病児保育所はるっこ開設。日本小児科学会小児科専門医、日本小児神経学会小児神経専門医。著書に「いいとこ探しののびのび子育て」あり。
はるこどもクリニック
病児保育所はるっこ(はるこどもクリニック併設)
七飯町本町6-7-42
☎0138-65-0500
http://haru-kodomo.com
■診療科目/小児科
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