心臓ができるまで
人の赤ちゃんは受精(排卵)から38週(最終月経からで言うと40週)で生まれますが、その3週目から8週目にかけては器官形成期と呼ばれ、さまざまな重要臓器が作られます。今回は心臓のでき方について紹介します。
まず3週目の中頃に血管ができ始めます。それまでは栄養は染み渡るようにして吸収されます。4週目になると、その血管の一部(原始心筒と言います)が太く長く成長することで必然的に折れ曲がり、それが心臓の原形となります。これは心ループと呼ばれ、カーブの入口側が心房、出口側が心室となります。さらに5週目になると、一連の通路が壁でふたつに分割されて、片側が右心系(全身から心臓に戻ってきた血液を肺へ送る通路)、もう一方が左心系(肺から心臓に戻った血液を全身に送る通路)となります。右心系には右心房や右心室が、左心系には左心房や左心室が含まれます。その後、胎児はおへそを通じて母親の胎盤から血液(栄養や酸素を含む臍帯血)を受け取りつつ成長を続けて出生を迎えますが、その間も脳や心臓には優先的に酸素の多い血液が流れるような仕組みになっています(胎児循環)。
こうしてでき上がる心臓ですが、小児においては胎児期の心ループや壁のでき方の異常など偶然の不具合でさまざまな先天性心疾患が生じます。成人でも遺伝や感染などで偶然生じるものもありますが、多くの後天性心疾患は高血圧や糖尿病、高脂血症、肥満、高尿酸血症などの生活習慣病も大きな原因です。これらの中にはちょっとした生活習慣(偏食や運動不足、喫煙や飲酒)の変更や簡単な内服治療で改善できるものもあり、それによって重い心臓病を予防できる可能性があります。若いうちはこうした生活習慣病が発症には到らなかったとしても、ときには健康診断を受けて予防のきっかけにしてみて下さい。
(ハコラク 2022年 2月号掲載)
略歴
平成10年、京都大学医学部卒業後、小児心臓外科医として京都大学医学部附属病院、静岡県立こども病院、山梨大学医学部附属病院で勤務。令和3年11月より西堀病院循環器内科勤務。日本外科学会外科専門医、日本心臓血管外科学会心臓血管外科専門医。
西堀病院
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