人間気象台に五苓散
頭痛持ちの人で、カラッと晴れたときは気分も爽やか、頭痛も忘れている。低気圧が近づくと気分もどんよりと曇った感じで頭も重くなり、ああいつもの頭痛が始まりそう、そして頭がズキズキするとまもなく雨が降ってくる─。下手な天気予報よりも良く当たる、そんな人間気象台のような人が少なからずいます。
低気圧や多湿によって水分代謝が影響を受け、体の水分が部分的に滞り、内耳もむくみ、そのため眩暈、耳鳴り、頭痛が起きます。さらには吐き気を伴うこともあり、病態的にメニエール病や偏頭痛とも共通する要素があるので、利尿剤などが効くこともあります。利尿剤は体全体の水分を利尿で減らすことにより、水のうっ滞を除こうというものです。うっ滞を起こしていない部分は逆に水分不足を起こします。効き過ぎると倦怠感や脱力感を起こすことがあるので、注意が必要です。利尿剤の多くは特定のイオンを排出して、それに伴い水を排出するメカニズムのため、体の電解質のアンバランスを起こす副作用もあり、これも倦怠感、脱力感の原因となります。
五苓散という漢方薬処方は4種類の水の巡りを良くする生薬と、1種類ののぼせをとる生薬、合計5種類の生薬で構成された処方です。五苓散によって水の巡りを良くし、体の一部にうっ滞した水分を全身に巡らせ、さらにのぼせを取ることによって、頭痛、眩暈、吐き気が治まります。体全体の水分量は多過ぎる時だけ利尿して適切に保たれ、細胞のイオンポンプではなく、アクアポリンという水門の開け閉めで細胞内外の水分の出入りを調節します。電解質バランスも崩さない、利尿剤にある副作用は全くなし、味や刺激的な匂いなど癖もなく飲みやすい、即効性もあると、ツボにはまると面白いように効く優れた処方です。 ほか、車、船、飛行機などの乗り物酔い、二日酔い、生理前のホルモン変動で具合が悪くなる月経前症候群なども同じような病態で同様な効果が期待できます。
(ハコラク 2021年12月号掲載)
略歴
昭和50年、札幌医科大学卒業。昭和60年に医学博士学位取得後、同年より市立室蘭総合病院産婦人科科長に就任。昭和62年より、秋山記念病院副院長に就任。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本東洋医学会漢方専門医。
秋山記念病院
函館市石川町41-9
☎0138-46-6660(代)
http://akiyama.hakodate.jp/
■診療科目/産科、婦人科、乳腺外科
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15:00~18:00
水 9:00~12:00
土 9:00~14:00
(第2・4は12:00まで)
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