骨盤臓器脱(子宮脱)について
「ある日、お風呂に入っていたら腟から何かが出ている、触れる」。これが骨盤臓器脱の症状です。骨盤臓器脱は女性特有の病気で、女性の骨盤底筋群(筋肉や靭帯)がいろいろな原因で緩んでしまい、子宮や膀胱、直腸、小腸などが腟壁とともに下がってくる病気です。子宮が出てくる場合には子宮脱、膀胱側の腟壁が出てくると膀胱瘤、直腸側の腟壁が出てくると直腸瘤と呼び、骨盤臓器脱はそれらを全てまとめた言い方です。重力や腹圧の影響を受けますので、重い物を持ったり、長い間立っていたりすると出やすくなります。早い人では出産直後からみられる場合もありますが、60~70歳以上に多く、アメリカのデータでは、80歳までに10人に1人くらいの方が骨盤臓器脱になると推定されており、決して珍しい病気ではありません。
治療は、まず腟内にペッサリーという専用の器具を装着して子宮や腟壁が下がってこないように支える治療が行われます。最近は、ペッサリーも柔らかめで形もいろいろな種類が出ており、さまざまなケースに対応できるようになってきました。ペッサリー治療がうまくいかない場合や、ご希望によっては手術が行われます。手術は、子宮を摘出したり、たるんだ腟壁を一部切除してたるみを取る手術(腟形成術)、腟壁にメッシュを埋め込んでたるみを抑える手術(メッシュ手術)、たるんだ腟壁を仙骨に吊り上げる手術(仙骨腟固定術)、前後の腟壁を縫い合わせて腟を閉じる手術(腟閉鎖術)などがあり、それらを組み合わせることもあります。
骨盤臓器脱は命に関わる病気ではありませんが、日常生活の妨げになり生活の質を低下させます。治療により症状の改善が見込める病気ですので、諦めたり我慢せずにぜひ産婦人科でご相談下さい。
(ハコラク 2021年8月号掲載)
略歴
昭和59年、札幌医科大学卒業。前製鉄記念室蘭病院高度生殖医療実施施設実施責任者、前室蘭産婦人科医会会長を経て、平成25年より現職。医学博士、日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医。
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