「とびひ(伝染性膿痂疹)」について
今回は「とびひ」についてです。良く聞いた病名とは思いますが、その本質を理解していない方が多いと思われます。この皮膚病の原因は黄色ブドウ球菌から出る毒素です。この細菌が皮膚に侵入して、体表の一番浅い表皮で増殖し、その細胞をバラバラにしてしまいます。そうするとその隙間に水が溜まり、水膨れが出来ます。その水膨れの中にはたくさんのブドウ球菌が増殖しています。水膨れはとても薄くすぐに破れてしまいますが、破れた水泡からは浸出液が出て、それに触れると正に〝とびひ〟するのです。むろん自分の身体、ほかの子供の皮膚にもです。
この皮膚病は小児に多く、季節は夏、最近は暖かい住居も多くなり、冬にも少し見られます。ひどくなると一見やけどにも見えることがありますが、自覚症状はあまりないか、軽いかゆみです。大切なことは、この病気にかかる小児はほとんどアトピー性皮膚炎を持っていることです。アトピーの患者さんは皮膚のバリア機能が弱く、細菌やウイルスの侵入を簡単に許してしまいます。普段からの皮膚管理が大切です。
もし大人が罹患した場合は免疫機能の低下も考えられ、糖尿病などの検査も必要となります。治療は抗生物質の内服や塗布が必要となりますが、アトピーもある小児には抗生物質含有ステロイド軟膏も有用です。また、ジュクジュクした状態がひどければ、自分に感染、ほかの小児への感染も考え、きちんとした皮膚の保護も必要です。幼稚園、保育園の場合、先生、保護者間で思わぬトラブルになることもあり慎重な行動をお願いいたします。特に夏は汗をかいたらすぐにシャワーを浴びるというような習慣も大切なことと思われます。最近は抗生物質の効果があまり無い場合もあり注意が必要です。まず、「とびひ」と思ったら他の科ではなく皮膚科の受診をおすすめします。
(ハコラク 2021年6月号掲載)
略歴
昭和52年、北里大学医学部卒業、北里大学病院、自治医科大学附属病院、函館五稜郭病院勤務を経て、平成27年、アルファ皮膚科クリニックを開院。
アルファ皮膚科クリニック
函館市本通1-7-22 メディカルプレイス2F
☎0138-33-7300
■診療科目/皮膚科
■診療時間/月・火・木・金 9:00~12:00
14:00~18:00
土 9:00~11:30
■休診日/水・日曜、祝日