味わいの不思議
食は健康の基本です。味覚の基本は、「甘い(甘味)」「すっぱい(酸味)」「苦い(苦味)」「塩辛い(塩味)」の4つですが、それに「旨味」が加わり、最近ではさらに「脂肪の味(脂味)」が注目されてきています。甘味は糖分、旨味はアミノ酸、脂味は脂肪分、塩味はミネラル分と、体に必要な栄養と関連しています。一方、苦味は毒物、酸味は腐敗物と結び付いています。
味覚は、動物としての人間が、何をとるべきか何をとるべきでないかを判断する大事な感覚です。生まれたばかりの赤ちゃんも、いろいろな味に反応することが分かってきています。例えば、苦味に関して、大人の半分の薄さの濃度を識別できるという実験結果があります。体に害を及ぼす可能性のあるものをしっかり検出する力を備えて生まれてくるのです。ところが、2~3カ月経つうちに、この反応が弱くなってくることも分かってきました。離乳食から幼児食にかけて、いろいろな味を受け入れていく準備をしていくようです。一方、離乳食の時期に味わった食べ物の味が、その後の食習慣と関係することが分かっています。塩味の濃いものをあげていると、塩辛いものを好むようになり、甘いものを多くあげていると、甘いものを好むようになります。
人は原始の時代から長い間、飢餓の中で暮らしてきました。しっかり栄養をとるため、甘味、旨味、脂味などの栄養に結びつく味は、脳の報酬系を活性化させ、「快」を感じるように出来ています。現代は、食生活が豊かで栄養過多になりがちです。つい味の濃い食べ物に偏り、栄養の取り過ぎから、成人病につながっていきます。手が回らない時は、時に市販のベビーフードを上手に活用することも必要ですが、なるべく手作りにして、赤ちゃんの時から薄味を心掛けましょう。健康で長生きするための成人期を見据えた食習慣づくりは、離乳食の時から始まっているのです。
(ハコラク 2021年3月号掲載)
略歴
昭和59年、北海道大学医学部卒業。同年4月から北海道勤医協札幌病院に8年間勤務後、静岡てんかん・神経医療センター小児科、道南勤医協稜北病院小児科医長を経て、平成21年9月、はるこどもクリニックを開院。平成23年12月病児保育所はるっこ開設。日本小児科学会小児科専門医、日本小児神経学会小児神経専門医。著書に「いいとこ探しののびのび子育て」あり。
はるこどもクリニック
病児保育所はるっこ(はるこどもクリニック併設)
七飯町本町6-7-42
☎0138-65-0500
http://haru-kodomo.com
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