肺非結核性抗酸菌症について
皆さんは「結核菌」や「らい菌」という菌名を一度は耳にしたことがあると思います。これらの菌は抗酸菌という細菌群に属しています。肺非結核性抗酸菌症とは、「結核菌」と「らい菌」以外の抗酸菌が肺に感染して起こる病気のことです。非結核性抗酸菌は水や土などの身近な環境にいる菌ですので、結核菌と異なり人から人へは感染しません。約190種の非結核性抗酸菌が発見されていますが、肺非結核性抗酸菌症の約90%を「マイコバクテリウム アビウム コンプレックス:MAC(マック)菌」が占めています。
肺非結核性抗酸菌症の患者数は増加傾向にあり、原因は分かっていませんが、中高年でやせ型の女性に多く、肺気腫症などで肺の一部が壊れている方や免疫を抑える薬を服用している方もかかりやすいとされています。症状として痰、咳、血痰、体重減少、微熱などがありますが、症状がなく検診で発見されることもあります。診断には胸部CT検査で特徴的な影を認めることと、痰の検査で2回以上同じ菌を確認することが必要です。 肺非結核性抗酸菌症の多くは数年以上かけてゆっくりと進行し、完全に治すことは難しいと考えられています。診断されたらすぐに治療を開始するのではなく、菌の種類と排菌量、患者さんの年齢・症状・基礎疾患、画像所見、治療のリスクとベネフィット(有効性)について患者さんと相談しながら治療の可否を判断します。軽症の方やご高齢の方は治療を開始せずに経過観察することがあります。マック菌が原因で治療を行う場合、2種類の抗結核薬とクラリスロマイシンを毎日服用し、少なくとも痰に菌が検出されなくなってから1年間続けます。重症の方にはストレプトマイシン注射を治療に加えることや手術も検討されます。
治療終了後も再発していないかどうか、定期的に検査を行う必要がありますので、この病気と上手につきあっていくことが大切です。
(ハコラク 2021年3月号掲載)
略歴
平成13年、札幌医科大学医学部卒業後、同大附属病院、帯広協会病院、国立病院機構帯広病院、函館五稜郭病院、伊達赤十字病院、道立苫小牧病院などを経て、平成24年、市立函館病院呼吸器内科に着任、平成28年、呼吸器内科科長に就任。日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医。
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