母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)
近年、妊婦さんの血液を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)で胎児の染色体疾患の有無を調べられるようになってきました。現在、日本でこの検査で検出できる染色体疾患は、21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーの3種類です。検査結果が陰性の場合、胎児に染色体疾患がみられる確率は0.1%以下です。検査結果が陽性の場合、胎児の染色体疾患の確率は高くなりますが、100%ではありません。年齢が35歳以上の妊婦さんが検査で陽性と出た場合、実際に染色体疾患が見られる確率は約80~95%です。したがって、検査結果が陽性の場合は羊水染色体検査で確認する必要があります。
このように母体血を採取するのみで簡便に実施でき、高い確率で胎児の染色体異常の有無を調べることができる検査ではありますが、問題点もあります。1つ目は、極めて簡便に実施できることから、検査に関する十分な説明が医療者から示されず、妊婦がその検査の意義や結果の解釈について十分な知識を持たないまま検査が行われるおそれがあること。2つ目は、検査の簡便さから胎児の疾患の発見を目的に、不特定多数の妊婦を対象とした「マススクリーニング検査」として行われる可能性があることです。 このため、この検査はエコーで胎児が染色体数的異常を有する可能性があるとされた場合や、高齢妊娠など一定の条件を満たす妊婦さんに限定して行われます。また、検査を検討する妊婦さんには適切な情報を提供し、検査結果について適正な判断ができるよう遺伝カウンセリングを行うことが必須です。
このように、NIPTを行うためには医療機関の支援体制が重要であることから、日本産科婦人科学会など関連学会は、NIPTを行うための支援体制などを備えている施設を認定しています。NIPTを検討されている方は最初にかかりつけの産婦人科医に相談し、検査を希望される場合は、必ず認定施設で受けて下さい。
(ハコラク 2021年1月号掲載)
略歴
平成5年、北海道大学医学部卒業。市立札幌病院NICU、盛岡赤十字病院NICU、北海道大学病院周産母子センター勤務を経て、平成17年より函館中央病院産婦人科医長、平成20年、同院総合周産期センター長(産科部門)、平成28年に同院診療部長に就任。北海道大学医学部医学科臨床指導教授。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。
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