病理診断の有用性について
病理診断は一般的にはあまりなじみがないと思いますが、診療においては重要な部分の1つです。病理診断は病理医が行います。病理医は実際に患者さんを診察することはないのですが、患者さんの胃腸や肺などから医師が内視鏡検査で採った組織や、針を刺して採られた組織、あるいは手術で採られた臓器や組織を顕微鏡で見ることにより病気の有無について診断します。たとえば、採取された組織内にがんなどの悪性の部分があるかどうか、またがんであった場合には、どのような種類のがんであるか、どこまでがんが広がっているかなどを調べます。近年、免疫染色などの手法を用いてより詳細ながんの分類が可能となってきています。
細胞診といって、より患者さんに負担の少ない検査で病気の診断をすることもあります。細胞診は子宮頸がん検診で有名ですが、乳がんや甲状腺がん、肺がん、すい臓がんなどの診断のためにも行われます。ブラシなどでこすり取った細胞や針で吸引した細胞で診断します。組織を採取する際に用いる針よりも細い針を用いるため、痛みや出血が抑えられます。採られた細胞は細胞検査士と病理医が協力して診断にあたります。病理診断や細胞診断の情報は臨床医に伝えられ、これらの情報をもとに患者さんの治療方針が決められます。
最近、がんに対する新しい治療薬(分子標的薬)が多数開発されており、これらの治療薬が病気に対して有効かどうかの判定を組織や細胞診の検体を用いて行うようになってきていますが、これらにも病理医が関与します。薬の標的となる物質が細胞の中にあるかどうかを顕微鏡で調べたり、また薬がその病気に効くかどうかを調べる遺伝子検査に用いる組織検体が遺伝子検査に適当であるかどうかの判断を行ったりします。
病理診断は古くからある病気の診断方法の1つですが、科学の進歩とともに、さらなる有用性が認識されてきています。
(ハコラク 2021年1月号掲載)
略歴
昭和58年弘前大学医学部卒業後、同大医学部産婦人科学教室に入局し産婦人科医となったが、病理学に目覚め大阪大学医学部病理病態学教室に入局。関西労災病院、堺市立総合医療センターなど大阪府、兵庫県の病院で病理医として20年以上勤務。令和2年4月に市立函館病院病理診断科へ着任した。日本病理学会病理専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医。
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