柴胡桂枝乾姜湯
寝汗をかく。頭に汗をかき髪が濡れるほど。動悸がして息苦しい。口の中が乾燥し苦い。味覚が鈍くなって、食欲がない。イライラしたり落ち込んだりする。眠れない。体が冷えてめまいやふらつきがある。ときどき体がカッと熱くなって微熱が出ることもある。
このような症状があると、感染症や、がんのような、何か重大な病気が隠れているのではないかと不安になります。何から調べるかとなると、動悸や息切れがあるので循環器科を、食欲不振や口の中に違和感があるので消化器内科、微熱があるので感染症内科を、神経過敏で精神科も…と、少なくとも4つの科にまたがって精査することになります。
その前に、前述の症状は柴胡桂枝乾姜湯の使用目標そのものなのです。まず1週間柴胡桂枝乾姜湯を試してみましょう。多くは、胸のつかえが取れてすっきりし、口の中の違和感が無くなり、食欲が戻ります。イライラも治まり、良眠できます。微熱や冷えも改善し元気いっぱい。あの症状は一体何だったのだろうとなります。
柴胡桂枝乾姜湯は漢方で柴胡剤と呼ばれる処方群の一つです。柴胡と黄芩が含まれ、胸のつかえやイライラ、不安感を取る効果があります。桂枝はのぼせに、乾姜は冷えに、栝楼根は口の乾燥感に、牡蛎は精神安定作用、甘草は動悸や不安などさし迫った症状を緩和します。冒頭に述べた症状を取るための処方です。
女性の場合、生理前や更年期にこのような症状が現れることが多く、それぞれ月経前症候群や更年期障害としてホルモン治療や精神安定剤を使って治療する事が多いのですが、使用目標に合致した適切な漢方薬の併用でさらに効果を高めることができます。
もっとも症状が取れたからといって油断しないで、機会があれば人間ドックなど総合検診を積極的に受けて、隠れた病気を見つけることが大切なことは言うまでもありません。
(ハコラク 2020年5月号掲載)
略歴
昭和50年、札幌医科大学卒業。昭和60年に医学博士学位取得後、同年より市立室蘭総合病院産婦人科科長に就任。昭和62年、秋山記念病院副院長に就任。専門分野は婦人科心身症、東洋医学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本東洋医学会漢方専門医。
秋山記念病院
函館市石川町41-9
☎0138-46-6660(代)
http://akiyama.hakodate.jp/
■診療科目/産科、婦人科、乳腺外科
■診療時間/〈産科・婦人科〉
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