血管病のための人間ドック
致死率80%。これは何の病気か想像出来ますか?かの有名な心筋梗塞でもたかだか10~30%の死亡率です。早々に答えを発表してしまいますが正解は「大動脈瘤破裂」です。なんだかおどろおどろしい名前ですよね。突然死を招く怖い病気なのですが、実はこの病気、事前に発見さえ出来れば予防が可能なのです。今回はこの「大動脈瘤」のお話です。
当科には「大動脈の病気と言われました」と来院される方が大勢いらっしゃいます。かかりつけの先生に「大動脈瘤の疑い」と診断され紹介状を持って来院されるのです。しかし、ほとんどの方は〝無症状〟でかつ〝偶然〟見付かった病気のため不安そうな表情で診察室に入って来られます。ですので、初めてお会いした方には「大動脈瘤」が一体どういう病気なのかを時間を掛けて説明します。心臓と同じくらい大切な臓器であること、病気を見付けてもらったのはとてもラッキーであること、タバコや動脈硬化が原因であること、多くは年間破裂率1~5%程度であること、心臓や足の病気も合併していることが多いことなどです。そのようなお話をして理解、受け入れが出来ると安心される方がほとんどです。
それではこの「大動脈瘤」はどうすれば見付けられるのでしょうか。症状もないのにかかりつけの先生に検査を希望するわけにもいきません。一番確実な方法は人間ドックです。人間ドックというとがんのイメージが強いかもしれませんが、CT検査を施行することでこの血管病は容易に発見することができます。イギリスでは65歳以上の喫煙歴がある男性は大動脈瘤検診を受けることが推奨されています。残念ながら日本ではそのような検診プログラムはありません。一度もCT検査を受けたことがない方は人間ドックを検討してみてはいかがでしょうか。
突然死という不幸を防ぐためにも、頭の片隅に置いておいて欲しい「大動脈瘤」のお話でした。
(ハコラク 2020年5月号掲載)
略歴
平成14年、北海道大学医学部卒業後、手稲渓仁会病院、東京女子医科大学病院、森ノ宮病院、チューリッヒ大学病院勤務を経て、平成27年、市立函館病院に着任。日本外科学会外科専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本心臓血管外科学会心臓血管外科専門医。
市立函館病院
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http://www.hospital.hakodate.hokkaido.jp/
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