歯科医院で使用される診察台の水
歯科診察台の水が汚染されているという記事が2015年読売新聞に続き、歯科界で世界的に権威のある雑誌「ザ・クインテッセンス」の2019年12月号にも論文掲載されました。
論文を要約すると、「夜間、休診日など診療が停止した時に診察台の水が停滞し水質悪化が起こる」「滞留する水の塩素濃度が低下し微生物が増殖、ばい菌の膜(バイオフィルム)が診察台の中に形成する」「歯を削る器具から放出した汚染水が感染を起こし死亡事故を起こした」という内容でした。主なばい菌はレジオネラやカンジダ(カビ)などで、「歯科治療を受けた患者に細菌感染が認められ、頸部リンパ節炎、顎骨骨髄炎を引き起こした。死亡例3名に関してはレジオネラ肺炎が直接的な死亡原因である」といった報告がされています。
では、細菌はどこからくるのか。1963年の研究までは口の中の菌が原因だと考えられていました。しかし、昨今の研究で細菌は水道水由来の「従属栄養細菌」が原因だと考えられるようになってきました。「従属栄養細菌」とは一般細菌が繁殖しない低温で水が豊富な環境で繁殖する微生物です。毒性は低いものの免疫力が低下している人への感染が指摘されています。では、どのように対策すれば良いか?ショックトリートメントといって薬品を用いて、診察台に形成されたバイオフィルムを破壊する方法がもっとも科学的根拠のある方法と言われています。
具体的には、あらかじめ薬品を添加した水を診察台に流し込む方法と、診察台に薬品を充填し給水されてくる水に希釈して循環させる方法があります。また、昨今の診察台の機種によっては循環する水が診察台の中に停留しないよう設計され、不衛生な状態になることを防止しているものも存在します。
歯科医院を訪れる患者様のニーズが多様化するこれからの時代、歯科医院も今後変革の時期に来ていると思います。
(ハコラク 2020年3月号掲載)
略歴
平成16年、岩手医科大学を卒業。平成18年、同大学口腔顎顔面再建学講座入局。平成19年、同大学大学院に入学し、平成23年に卒業。道内外の歯科勤務を経て平成28年、シュンデンタルクリニック開院。岩手医科大学非常勤講師。SJCD(Society of Japan Clinical Dentistry)理事。歯学博士。
シュンデンタルクリニック
函館市石川町461-38
☎0138-47-3737
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■診療科目/歯科、歯科口腔外科、小児歯科、矯正歯科
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