膀胱瘤と子宮下垂
60歳を過ぎても元気に働いている方の中で、お風呂に入ると膣の入口に柔らかいピンポン玉のような膨らみがあるのに気付く人がいます。立って歩いたり、排尿後はなくなります。痛みもなければ触ってもなんともありません。何だろうかと驚いて外来に来られる方がおります。膀胱の下の壁が下がってくる膀胱瘤です。膣壁と膀胱は薄い筋肉を挟んで隣り合っています。長い間下腹部に力を加える生活をしていると、ある日突然にポッコリと膀胱の壁が押し下がり膣壁を押し出し膀胱瘤となります。初めのうちは症状がありませんが次第にふくらみが大きくなり、排尿後も残尿感を覚えるようになります。老化の一つと考えられます。
治療方法は定期的に排尿をして膀胱を空にすることです。更年期になると女性ホルモンがなくなり、膣壁膀胱の弾力が少なくなり膀胱瘤を助長します。軽い膀胱瘤であれば女性ホルモンを服用することである程度の治療は可能ですが、ほとんどの場合は次第に程度が重くなります。膀胱を支えるため膣に挿入するRingがありますが、性生活の支障になりますし、Ringによる膣壁のただれを生じるため定期的な交換が必要です。あくまで対症療法であり根治はしません。
75歳までのまだ体の若々しい人は膀胱瘤の手術をするのが根本治療です。この場合はほとんどの人が子宮が下がる子宮下垂を伴っていますので、膣から子宮を摘出し膀胱瘤の手術と併せてするのが根治治療法です。子宮が下がった感じは子宮口まで子宮が下がらなければ症状がありませんが、膀胱瘤は排尿後不快という初期の症状から分かります。過活動膀胱、膀胱炎などとの鑑別が必要ですが、排尿不快のある方は一度産婦人科に受診をしてみられることをおすすめします。
(ハコラク 2020年3月号掲載)
略歴
昭和47年、岡山大学医学部卒業、同年ECFMG認定(認定番号1747732)、昭和50年より北大医学部癌研病理部門研究生を経て、昭和55年に医学博士学位を取得。国立高知医科大学産婦人科講師、函館五稜郭病院産婦人科科長などを経て、昭和62年産科婦人科秋山記念病院開設。平成8年には森町レディスクリニックを開設した。専門分野は産科学、悪性腫瘍。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。
秋山記念病院
函館市石川町41-9
☎0138-46-6660(代)
http://akiyama.hakodate.jp/
■診療科目/産科、婦人科、乳腺外科
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