卵子の老化と不妊治療の残り時間
妊娠する力は年齢と深く関係しています。女性は生まれた時点で一生分の卵子のもと(原子卵胞)を卵巣内に蓄えていると考えられており、原子卵胞の数が増える事はありません。出生時に200万個もあった原子卵胞は思春期には30万個にまで減少し、その後は毎月1000個程度ずつ減少を続け、残り1000個を切ると閉経間近となります。また、卵子は老化もします。例えば、ミカン箱(卵巣)のミカン(卵子)は上の方から食べていきますが(排卵)、上の方のミカンは新鮮ですが、下の方のミカンは食べるまでに時間がたっていくと(加齢)、だんだん傷んでくるものも出てきます(卵子の質の低下)。これが卵子の老化です。卵子は自分自身の加齢とともに老化もし、その数も減少するため、妊娠する力が年齢とともに低下していく事になります。
しかし、不妊治療の現場では20代で不妊に悩む方がいますし、40代で妊娠する方もいます。それは、卵子を成熟させ女性ホルモンを産生するといった卵巣の機能や、卵巣内に残存する卵胞の数や卵子の質―妊娠する力―は、個人差も大きいためです。
その卵子の数を知る目安として、AMH検査があります。AMH(アンチミュラー管ホルモン)は発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、その数値は卵巣内にどのくらい卵が残っているかを反映すると考えられています。卵子の減少に影響するのは、卵巣の手術、子宮内膜症、 喫煙などの後天的な要因もありますが、生まれつき同年代の方より少ない値を示す方もいます。そのようなAMH値が低い方は早く閉経するため、妊娠できる期間がより短い傾向にあります。AMH値の高い低いは、必ずしも妊娠率とは一致しないのですが、不妊治療を行うにあたっての「残り時間の目安」と捉える事はとても重要です。妊娠を希望している方は、まず専門医を受診しAMH検査を受けることをお勧めします。
(ハコラク 2018年5月号掲載)
略歴
平成10年、札幌医科大学医学部を卒業し、札幌医科大学産婦人科教室入局。道内関連病院での臨床を経て、札幌医科大学産婦人科学講座助教として臨床と研究に従事。平成20年からレディースクリニックぬまのはた院長、平成22年、浅田レディースクリニック副院長、神谷レディースクリニック副院長を歴任後、平成26年4月、さっぽろARTクリニックを開院。
さっぽろARTクリニック
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☎011‐700‐5880
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■診療科目/不妊治療専門
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