甲状腺がんとその治療に関して
甲状腺は頸部の真ん中の下方、男性でいうと喉ぼとけの下のほうにある蝶々のような形をした臓器で、そこにできるがんが甲状腺がんです。頻度は、全がん症例の1%程度です。女性に多く、男性の約3倍で、年齢では50代に多いとされています。
病理組織は大きく分けると5つあり、乳頭がん(90%程度)、濾胞がん(3%)、と髄様がん、低分化がん、未分化がんといった種類があります。乳頭がんと濾胞がんは分化がんと呼ばれています。甲状腺のしこりや頸部リンパ節腫脹を健康診断などで指摘されたり、声がすれで受診される患者さんが多いです。甲状腺がんの診断には触診、超音波検査、穿刺吸引細胞診、CT検査などが必要となります。血液検査による甲状腺がんの診断は髄様がんのみで可能です。甲状腺がんの治療はまず手術です。手術は病巣の範囲によって葉峡切除術と甲状腺(亜)全摘出術があります。さらに頸部リンパ節転移がある場合には、頸部郭清術を同時に行います。全摘術後は、甲状腺ホルモン剤を一生服用しなければならなくなります。
分化がんは非常におとなしいがんであり、穏やかな経過をたどることが多いのですが、放置した場合、筋肉、気管、食道、反回神経(声を出す神経)などへ浸潤したり、同側の頸部リンパ節あるいは反対側の頸部リンパ節へ、さらには血行性に肺や骨へ転移する場合があります。血行性転移が起こる前に病巣を完全に摘出できた時には、ほとんどが治癒し、進行した症例を含めても、その治療成績は10年生存率90%以上です。低分化がんの悪性度は分化がんより高く、未分化がんよりは低い位置づけとなります。
そのほかの治療として手術で取り除けなかった微量の甲状腺組織の破壊を目的としたり、再発または遠隔転移の治療には放射性ヨードの内用療法があり、また、切除不能な甲状腺がんの治療には分子標的薬が適応となったため治療の幅が広がっています。
(ハコラク 2018年9月号掲載)
略歴
平成17年、札幌医科大学医学部医学科卒業後、天使病院、北海道大学病院、北海道がんセンター、手稲渓仁会病院、函館中央病院、砂川市立病院、国立がん研究センター研究所、市立旭川病院を経て、平成30年、函館中央病院耳鼻咽喉科科長就任、現在に至る。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医。
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