糖尿病治療の今について
私事ですが、糖尿病専門医になり約20年経ちました。20年前の糖尿病治療薬は、インスリンの注射剤、数種類の経口剤しかありませんでした。当時の治療薬でも血糖値を下げることはできました。ただし薬によっては重篤な低血糖や体重増加、また、使い続けることで膵臓に負担がかかることがありました。
その後、安全かつ強力に血糖値を改善させる作用がある「DPP4阻害薬」が登場しました。さらにこの10年で糖尿病治療は大きく進歩しました。「SGLT2阻害薬」「GLP1受容体作動薬」の登場です。何が進歩したのかというと、血糖値を下げるのはもちろん、心臓や腎臓を守る作用がありそうだということが分かってきました。年齢を重ね病気になることで、心臓や腎臓の機能が低下することがあります。それを防ぐことができれば元気な時間を伸ばせます。その可能性がある薬の登場は画期的なことだと思います。
血糖値を知ることに関しても新しい機器が登場しました。血糖値は変動します。その変動を繋がった値で見られることで、診断や治療が変わりました。従来、血糖値を知るには指先に針を刺して血を出し測定しなければなりませんでした。しかし近年は、お腹や肩にコインサイズの機器を装着することで、10~14日分の血糖値に近い数値を割り出すことが可能になりました。持続的に血糖値に近い数値を測定する機器は、リブレ、デクスコムG7という機器で、リブレは14日間、デクスコムG7は10日間連続で推移を知ることが可能です。機器によっては低血糖の予想ができ、スマートフォンやスマートウォッチなどから警告してくれる機能も備っています。
現在、いろいろな糖尿病治療、機器の登場により、正常な方とほぼ変わらない生活を送る事が可能となっております。また、iPS細胞による膵臓の再生医療の研究が進み、実用化に向けての段階に入っています。いよいよ糖尿病が治る時代が、目の前に見えて来たと考えています。
(ハコラク 2025年1月号掲載)
略歴
平成12年、川崎医科大学卒業後、山口大学医学部第三内科入局。河北総合病院内科、国立国際医療研究センター、東京大学医学部附属病院などの勤務を経て、令和2年、たかさわ糖尿病内科クリニックを開業。日本糖尿病学会糖尿病専門医。