虫歯予防の5つの因子
歯垢には1㎎の中に2億以上の細菌が存在します。糖を摂取すると、ある種の細菌がそれを代謝し、酸を産生します。酸により歯の表面が溶けて、虫歯が発生し、さらに進行します。虫歯に関する5つの因子を改善することで、発症を予防することができます。
第1は、虫歯の直接的な原因である歯垢を取り除くことです。歯磨きは1日2回以上、丁寧に行うのが重要です。歯ブラシのほかに、歯間ブラシやフロスを使用すると磨き残しを減らせます。
第2に、フッ素入り歯磨剤の使用です。フッ素は歯の表面の自然修復を早め、歯の結晶を強くし溶けるのを遅らせ、さらに細菌の活動を阻害する働きがあります。
第3に、虫歯になりにくい食べ方の実践です。糖の摂取の回数を1日4回に減らすことが重要です。通常、糖を摂取後約60分の間、歯が溶けだします。虫歯にならない食べ物は、チーズ、ナッツ、生野菜などです。飲み物では水、お茶、牛乳、ブラックコーヒーなどです。キシリトールやソルビトールなどの糖アルコールは虫歯になりにくく、アスパルテームなどの人工甘味料は細菌が代謝できません。
第4に、酸性の飲食物の摂取をできるだけ避けることです。頻繁に摂取することで、口の中は酸性の状態になりやすく、虫歯が急速に進行します。清涼飲料水、スポーツドリンク、お酒、果物、野菜ジュース、飴などに注意が必要です。酸性の物の飲食の後には、チーズや牛乳、お茶を摂取するといいです。酸性の飲食物の摂取後すぐに歯磨きをすると、酸で溶けた歯の表面が削れてしまいます。30分以上経ってから磨きましょう。
第5に、唾液が虫歯に対する最大の防御因子です。唾液は糖を洗い流し、酸を中和し、溶けた歯の表面を修復するなどの働きがあります。薬の副作用や病気のせいで、唾液が少ない方は注意が必要です。食後は早めに高濃度フッ素入りの歯磨剤で歯磨きをしたり、キシリトール入りのタブレットやガムで唾液分泌を促すのが有効です。
これらを改善することが、虫歯にならない口の中を作る鍵になります。
(ハコラク 2024年12月号掲載)
略歴
昭和59年、函館中部高等学校卒業。平成2年に北海道大学歯学部を卒業後、札幌市内の歯科を経て、平成17年から吉田歯科口腔外科に勤務。