地元の人から愛される菓子作りで、知内町の魅力を発信
ポン菓子作りの原理を応用し新食感の土産品を開発
知内町小谷石地区の海岸沿いにある「やごし本舗」は、2012年に開業したポン菓子製造店。この地で生まれ育った村田優代表は、地元を盛り上げようと観光業に着目。「青の洞窟」をはじめ、道南の秘境と呼ばれる矢越海岸で見られる大自然の魅力を伝える「矢越クルーズ」の運航を始めると同時に、地域の新たな土産品となる菓子作りを目指して「やごし本舗」を立ち上げた。知内町産の白米を使った昔ながらのポン菓子「すぐるどん」の発売を皮切りに、ポン菓子製造の原理を応用してさまざまな食材の加工に挑戦。数々の失敗を経て、ポン菓子機を使った乾燥マカロニの調理を試みると、ラスクのようなサクサクとした軽い食感と、口の中でシュワッと溶けるような独特の口当たりを生みだすことに成功。北海道でポン菓子を〝どん菓子〟と呼ぶことにちなみ「ドン・デ・マカロニ」と名付けて商品化した。シュガーバター味を定番に、函館の老舗「美鈴珈琲」とのコラボ商品を展開するほか、サクラチョコレート、ココナッツなど、期間限定の味付けも話題を呼んでいる。
どん底から起業を決心 故郷に恩返しできる仕事を
菓子製造は全くの未経験だったという村田代表が「やごし本舗」を立ち上げたのは、27歳の時に交通事故に見舞われたのがきっかけ。一時はもう歩けないかもしれないという状況の中で車椅子生活を送り、2年に渡るリハビリを経て日常を取り戻すと、「どん底を経験したらあとは上がるだけ。人生好きなことを何でもやってみよう」と、起業を決意。子供の頃に親しんだ思い出の味や大きな音を立てて焼く製造風景のインパクトに、ポン菓子から新たな土産品が生まれる可能性を感じ、独学で製造方法を勉強。試行錯誤の末誕生したマカロニのポン菓子「ドン・デ・マカロニ」は、当初なかなか売れず苦労も多かったという。「1つでも買ってもらえると嬉しくて」と、地道な販売を続け、次第に知内町内を中心に手土産として知られるように。さらに発売から3年ほど経った頃、SNSを通じて「食べると止まらなくなる」という口コミが広がり注文が急増。函館出身のロックバンドGLAYのTERUさんが短文投稿サイト「ツイッター」で商品を絶賛したことも重なり、全国でも知られる道南土産となった。
人々の思い出に残るロングセラー商品を目指す
「ドン・デ・マカロニ」の製造に使用するのは、鉄製の一升釜を備えた昔ながらのポン菓子機。熱した鉄釜に乾燥マカロニを投入し、密閉状態で圧力を掛けながら火にかけること約10分。最も食感良く仕上がる頃合いを見計らい、フタのフックをハンマーで叩くと、耳をつんざくような〝ドンッ〟という音と共に、受け網の中へと膨らんだマカロニが勢いよく飛び出し、真っ白な煙と香ばしい匂いが工場内に立ち込める。サクサクに焼き上がったマカロニを大鍋に入れ、道産ビート100%の上白糖とバターで味付ければ、濃厚なコクと風味が加わり、ところどころに砂糖の塊が付いた手作りならではの仕上がりが、飽きずに食べられる秘訣となった。「ヒット商品より、おじいちゃんやおばあちゃんの家に当たり前にあったどん菓子のようなお菓子を作ることがやごし本舗の原点。ドン・デ・マカロニを地域の人から懐かしいと言われるロングセラー商品にしていきたい。地元で本当に愛されているお土産として観光客の方にも知ってもらえたら」と村田代表。故郷への思いを込めて菓子作りに向き合っている。
やごし本舗
知内町小谷石99‐8
☎01392‐6‐7854
問い合わせ/8:00~18:00
土・日曜定休
ハコラク2022年9月号掲載