郷土料理として愛されるクジラ肉
今後の食糧危機の改善策としても注目
北海道産海産物を原料に工場メイドの家庭の味
水産食料品加工会社「トナミ食品工業」は1949年に函館市入舟町でイカ油脂を製造する利波水産加工所を開業したのが始まり。その後、海産物を使った観光土産品の取り扱いへとシフトしていき、函館特産の「いか徳利」やイカそうめんの製造・販売を開始した。88年に法人化し、2006年に現社名に変更して、今は2代目の利波英樹社長が先頭に立ち、〝家庭の台所の役割を工場で〟を目標に掲げ、時代の潮流に沿った事業を展開。北斗市追分にある本部工場を中心に稼働している6工場では、北海道や近海の海産物を原料に、宿泊施設や飲食店向けの業務用商品製造をメインとしつつ、消費者目線で開発・商品化した一般家庭向けの製品、海外輸出向けと合わせて300点以上のアイテムを製造している。取れたての鮮度と味わいを高い冷凍技術でキープした看板商品「函館いかそうめん」をはじめ、道産水ダコのスライスほか、干物、唐揚げ、燻製、珍味など、素材が持つ本来の味を大切にした自慢の商品が揃う。2006年にオープンした本部工場付設の直売店では、業務用商品を中心に、小売、贈答品用まで約170種類を直売価格で販売。〝海の街・函館の味〟を家庭にも届けている。
古くから重宝されてきた〝海のジビエ〟クジラ肉
クジラ肉の赤身は低カロリー、高タンパク、鉄分も多く、脂部分には豊富なコラーゲンも蓄える海のジビエ。クジラベーコンは東京の取引先からの依頼をきっかけに2005年から製造を開始した。当時の工場長が培ったノウハウをベースに、昔ながらの製法でほぼ手作業。現在の原料は弾力のある「ニタリクジラ」、とろけるような脂の「ミンククジラ」、赤身も脂も口の中でほどける「イワシクジラ」など、道内の漁港で水揚げされるものが中心で、調味料は塩のみ。10日間ほど塩水漬けにした皮つきブロック肉を、蒸して旨みを凝縮。皮を包丁で切り落として、表面を鮮やかな赤色に染め上げる。利波社長は「日本の食文化とクジラは切り離せない。食料難の時代は豚肉や牛肉の代用品だったが、今、クジラ肉は希少な高級食材となり、食卓からは少し遠ざかった」と話す通り、日本の鯨食文化は縄文時代には始まっていたと考えられている。第2次世界大戦後には、食糧難を救う安価で栄養価の高い食材として重宝され、国を挙げて南極海へ捕鯨船を派遣。多い時で年間20万tほどが消費され、日本人のお腹を満たしてきた。1960年代をピークに需要が減少し、なじみの薄い食材となったが、炭鉱所や製鉄所のあった地域を中心に郷土料理として残り、函館でも正月料理の「クジラ汁」が知られている。「今後予測されている食料不足問題にも活用できる天然資源。気軽に食べられる身近な食材としても親しんでほしい」と先を見据え、新商品「くじら肉のカレー」を開発。年内にも直売店や函館朝市にある「函館くじら屋」で販売する予定だ。
トナミ食品工業株式会社
北斗市追分4‐6‐8 ☎0138‐48‐1234
[直 売 店]北斗市追分4‐6‐8 ☎0138‐48‐2468
9:30~17:00
日曜・祝日定休(不定休有り)
P有り クレジットカード利用可
[函館くじら屋]函館市若松町8‐10函館朝市内 ☎0138‐23‐4063
8:00~14:00
水曜定休
クレジットカード利用可
ハコラク2024年9月号掲載