道南生まれのこだわり食材で飛び切りのアイスクリームを
映画館の売店アイスからプロ御用達の本格冷菓に
「冨士冷菓」は、1947年創業のアイスクリームとシャーベットの専門店。昭和初期、北洋漁業で栄えた函館には映画館がいくつもあり、初代・金子昭二さんが、親族の経営していた映画館「冨士館」の売店や売り子に商品を卸すため、アイスキャンディーやソフトクリームを製造したのが始まり。その後、映画館の減少を見据え、ホテルや飲食店の料理に合わせたデザートアイスの製造を請け負い、湯川町にあった割烹旅館の依頼で当時珍しかった抹茶アイスを開発したのをきっかけに、業務用の本格アイスクリームの製造に事業転換。消費者からの要望を受け、店舗を建て替えた40年ほど前から小売りも行ってきた。現在は創業者の娘で、長年アイス作りに取り組む中村久仁子さんと夫の彰宏さんが二人三脚で事業を引き継ぎ、業務用アイスの卸しや飲食店のオリジナル商品の製造に加え、定番から季節限定まで常時40種類以上のアイスクリームやシャーベットを店頭販売。道産の新鮮な牛乳と乳脂肪分47%の生クリームをベースに、卵を使わず練乳でコクを出す伝統のアイスクリームは、濃厚でミルク感豊かな甘さとさっぱりとした後味が特徴。シンプルかつ厳選した素材や天然由来の自然な風味と色にこだわる商品の数々は、子供から年配者まで幅広く愛され、外国人観光客からも人気を集めている。
78年培った製造技術で地元素材を生かし切る
「できるだけ地元のこだわりある素材を使いたい」と語る中村社長は、本来賞味期限の定めがないアイスやシャーベットを、素材の良さを最大限生かすため、日々少量ずつ作りたてで用意。2023年に発売した「酒粕あいす郷宝」は、道南で35年ぶりに誕生した酒蔵・箱館醸蔵の日本酒「郷宝」の発売に伴い開発。地元の水と米から醸造される「郷宝」は、四季醸造のため通年香り高いしぼりたての酒粕が入手でき、ほかの銘柄より精米歩合が高く、酒粕から米の風味が出やすくアイスクリームにするのに相性が良かったという。酒粕とアイスとしてのバランスを追及した真っ白な「酒粕あいす郷宝」は、一口で牛乳のコクと米の旨み、ふわりと鼻に抜ける日本酒の香りが楽しめ、さっぱりとレモンを利かせた「酒粕ソルベ郷宝」と共に七飯町のふるさと納税品に。酒粕アイスは今年2月、優れた道産加工品を認定する「北のハイグレード食品2025」にも選ばれた。中村社長は、16年に山口県の有名酒蔵とコラボした酒粕アイスで全国のご当地アイスクリームグランプリの最高金賞を受賞した実績を持つが、「今回の認定で日本酒のおいしさをアイスにする技術を含め、改めて認められたようでうれしい」と顔をほころばせる。昨年12月には市内の丸善納谷商店のガゴメとろろ昆布と道南食糧工業のしょう油を使い、キャラメルのような香ばしさを感じる新感覚の「昆布醤油あいす」を発売。常に味の改良を重ね挑戦も欠かさない姿勢に、愛され続ける理由が詰まっていた。
株式会社 冨士冷菓
函館市大森町18‐15
☎0138‐22‐3819
11~4月
10:00~16:00
月・木曜定休
5~10月
10:00~17:00
木・第4月曜定休
キャッシュレス決済利用可
ハコラク2025年5月号掲載