地元企業と市民の食卓を支え45年愛される肉問屋
業務用の食肉卸会社が小売りに挑戦し供給を守る
業務用の精肉販売や食肉加工を手掛ける卸会社「北農食販」は、段ボール箱製造販売の「ホリカワ」、包装用資材販売の「丸和資材」、建設関連の「マルエイヒュース」などを展開するホリカワグループの食品販売事業。1930年、菓子箱の製造販売「堀川ボール箱店」として創業した後、紙器メーカー「丸栄堀川紙器」として改組したのを始まりに、多様化するニーズに応えるため事業を拡大してきた。「北農食販」は、包装資材などを販売してきた取引先の一つが、商品の販路確保に難航していたことを受け、恩義を返そうと食品の卸しを引き受けるため、1980年に設立。以来ホテルやレストランなど料理のプロを相手にした食肉の卸しや食肉加熱製品の製造、プライベートブランド商品の委託加工を請け負い、地域企業を支えてきた。転機となったのは2021年。コロナ禍により外食産業への卸しが厳しい状況となったことから、メーカーからの仕入れや商品の流通を維持する目的で、同社初の試みとして工場敷地内に一般家庭に向けた小売り店「お肉の直売所」をオープンした。牛、豚、鶏、羊肉など、道産ブランド肉や国内外から厳選する上質な肉を100g単位の少量から販売し、焼いたり温めるだけですぐに食べられる加工品や冷凍商品、日替わり総菜も用意。プロ御用達の味が手頃な価格で味わえると、口コミでファンを増やしてきた。
〝肉の神〟を看板商品に プロがうなる味を家庭でも
直売所の目玉商品を作ろうと開発した「神のほるもん」は、常にさまざまな精肉を扱う肉問屋の強みを生かし、道産豚のタン、ガツ、ハツ、大腸や牛タン、牛ミノなど7種類を合わせたミックスホルモン。新鮮な内臓肉を丁寧に洗って臭みを取り、食べやすく包丁で切り分けたら、1袋に全種類のホルモンが均等に入るよう計量しながら手作業で袋詰め。味付けは赤みそ仕立ての「味噌」、豆板醤を利かせた「旨辛」、香り高い「塩ダレ」の3種類あり、そのまま焼くだけで部位ごとに異なるホルモンの味や食感を楽しめる商品に仕上げた。商品名は、精肉業に携わり40年以上の工場長こと加藤敏和製造部長が、かつて道産和牛を海外に卸すため台湾に赴いた際、現地の人がその仕事ぶりに驚き、「肉の神」とたたえたエピソードに由来。2022年には、ラムショルダーを子供も食べやすいやや甘めのタレで味付けた「神ギスカン」も発売し、パッケージに工場長の似顔絵をデザインした神シリーズとして直売所の看板商品となった。長年工場スタッフと連携しながら、営業として取引先と向き合い、昨年9月にグループの代表に就任した花岡孝一社長は、「飲食店向けに卸してきた商品を小売りすることには葛藤もあった」と振り返る。地域の支えがあって40年以上続いてきたという事業を守っていくため、感謝の気持ちを胸に〝地元の肉屋〟として企業や市民の食卓に貢献し、この先も100年愛される会社を目指して仕事に取り組んでいる。
北農食販株式会社
函館市昭和3‐18‐10
☎0138‐40‐6000 「お肉の直売所」
11:00~17:00
水・日曜、祝日定休
P有り
キャッシュレス決済利用可
ハコラク2025年2月号掲載