海産珍味づくりを通して北海道の食をPR
イカに重点を置いた創業73年の水産加工会社
イカを中心にした海産珍味製造・卸販売専門の水産加工会社「山一食品株式会社」は、1951年、兵庫県出身の初代・山本新蔵社長が函館市元町で「山本商店」を創業したのがはじまり。兵庫県から一緒に来ていた親族と力を合わせて会社を盛り立て、戦後の経済復興景気に乗り業績を上げたのを機に54年、東川町で株式会社を設立し現社名に変更。原料イカの安定確保を目的に、道内屈指の漁獲量を誇る釧路市にも冷蔵庫と工場を61年に設立した。増産に伴い73年に函館市港町に本社工場を建設し、今の場所へは2011年に移転。現在は4代目の吉村健太郎社長が息子の吉村直人常務とともに事業をけん引している。人の手による細やかな味わいを作り出す商品づくりにこだわり、原料イカの生処理から製品製造、パッケージングまで一貫して自社で手掛ける。原料イカは担当者や業者が市場で直接競り落とし自社で急速冷凍する道内産を主力に、国内外産も使用。中でも道産スルメイカのみを使う「あたりめ純」「げそのてり焼」は自慢の一品。また、道東産タコを活用した珍味も評価が高く「たこくん」は農林大臣賞を、「味付たこ」は水産庁長官賞を受賞した。国際的食品衛生管理手法「HACCP」を取得しており、ハワイや東南アジアへの輸出数も堅調だ。
イカの街・函館を支えてきた半世紀愛され続ける珍味
地元で長く親しまれている「函館こがね」は、1974年に「丸ト豊山食品」の豊山秋央社長が考案し製法特許権を取得したイカ珍味。大衆珍味として全国に販路を拡大し函館の水産加工業界全体を盛り上げたいと、同年、道南の水産加工会社など33社で「函館こがね部会」を結成し、部会員に製造技術を無償提供。現在所属する8社が、国産スルメイカを原材料とし、半製品までは国内、加工地は函館であることなどを取り決め、ブランディング保持に務めている。製造工程は同じでも、企業ごとに味や食感に特色があり、部会設立当初から製造をスタートした「山一食品」は、釧路市を中心に仕入れた道産スルメイカの胴体のみを使い、しっかりとした歯応え、調味料で引き出した濃厚な旨みが特徴。製造はスタッフの手作業がメインで、解凍したイカを壺抜きし切り開いて、大きい個体はミミを外して水洗い。皮付きのまま1分半ほどボイルして水で急冷し、砂糖や塩などの調味料を入れて一晩置いて味をなじませる。調味したイカは乾燥機にかけ胴体のみの「だるま」と呼ばれる状態に。氷点下20度以下の環境で数週間寝かせた後、鉄板で挟み焼き。ローラーで伸ばしてイカ引きさき機にかけた後に再度味付けし1カ月ほど冷蔵庫で休ませて、熱風にゆっくり当てて乾燥し、最終的にはイカの含水率を25%まで下げるという。完成まで2カ月掛かる「山一食品」の「函館こがね」は、市内スーパーや土産店で販売。名古屋以南の物産展でも定番品として人気が高く、電話連絡すれば本社でも購入できる。吉村常務は「道産イカの価格はここ10年で6倍ほど高騰したが、今後もできるだけ道産食材にこだわった製品づくりを続けていきたい」と、技術力の高さを武器にたゆまぬ努力を続けていく。
山一食品株式会社
函館市港町1‐36‐11
☎0138‐43‐1211
9:00~16:00
土・日曜、祝日定休
P有り
ハコラク2025年1月号掲載