代々受け継いできた牛乳に付加価値を付けた商品づくり
道南きっての老舗牧場 唯一無二の牛乳を製造
七飯町大沼の「山川牧場」といえば、道南随一の知名度を誇る生乳の生産、牛乳の製造、加工・販売会社。その歴史は古く、4代目・山川明社長の曾祖父が1904年、七飯町に入植したことに始まる。昭和初期に大沼地区に移転した祖父が畜産、酪農に力を入れ、1945年に牧場直営の牛乳販売をスタートした。差別化を図り、ジャージー牛を道南で初めて導入したのは30年以上前のこと。ジャージー牛は現在でも飼養頭数が少なく、国内では0.8%しかいない希少な乳牛。日本で広く知られるホルスタイン種と比べ、体格は小柄だが乳タンパクや乳脂肪分が多いミルクを出すことができる。山川牧場が現在飼養している乳牛は、ホルスタイン種とジャージー牛を合わせて150頭ほど。より高い品質を求めこだわっているのが、牛乳の味や香りに反映する牛のエサ。有機農法で飼料用の牧草とデントコーンを輪作し、短期間の間に土を起こして豊かな土壌を育み、良質な飼料を作り出してきた。手間と時間をかけて搾られるジャージー牛とホルスタイン種の生乳をブレンドし、高温保持殺菌・成分無調整・ノンホモ加工で仕上げる「特濃牛乳」は、牧場の顔として長く愛され続け、アジア最大級の食品・飲料展示会「FOODEX JAPAN2013」のご当地牛乳グランプリで金賞を受賞するなど高く評価されている。
6次産業本格化 ジャージー牛乳チーズ誕生
北海道新幹線開業を目前に控えた2016年3月5日に、観光客の需要を見込み、イートインと買い物も楽しめる生乳加工施設「山川牧場ミルクプラント」をオープン。酪農系の学校を卒業し各分野の専門知識を身に付けた山川社長の4人の息子たちが役割を分担し、かねてから製造・販売していたソフトクリームのほか乳製品、飼養を開始した食肉牛の加工品などバリエーション豊かに商品を展開。全国的にも珍しいジャージー牛乳100%のチーズの製造は、酪農学園大学を卒業した四男・大貴さんが担当する。製造は週1回、「できるだけ新鮮なものを届けたい」と短期間で売り切れる少量生産。まだ温かい搾りたての牛乳を低温殺菌し、乳酸菌を入れて発酵させ豆腐状に固め、専用のナイフで細かくカットする。製造するチーズに合わせて、乳酸菌の活性化と停止を温度管理で調整し、手作業で素早く作り上げていく。現在、販売しているのはフレッシュタイプの「モッツァレラチーズ」「さけるチーズ」、1週間冷蔵庫で乾燥させるセミハードタイプ「プロヴォローネチーズ」、近年登場した「ゴーダチーズムーン」の4種類。濃厚かつ上品な味となめらかな食感が評判で、リピーターも多い。また、製造時に出るホエイの一部は、石鹸やバスソルト、フェイスパックに活用。山川社長は「今、軌道に乗っている事業を維持し、新商品の開発や規模の拡大も検討している。近い将来は牛舎を新しくできれば」と、堅実に事業の足元を固めながら、次の展開に向け思案を巡らせている。
有限会社 山川牧場自然牛乳
山川牧場ミルクプラント
七飯町大沼町628
☎0138‐67‐2114
10:00~17:00※11~3月は16:00まで
木曜定休(祝日の場合は営業し翌日休み)
禁煙 P有り
キャッシュレス決済利用可
ハコラク2024年11月号掲載