道産果実を使ったロシアンスイーツで、日露の架け橋に
シアンティーに不可欠なオリジナル商品を開発
開港都市として、日本初のロシア領事館が開設されるなど、ロシアゆかりのスポットが数多く残る函館西部地区。日和坂の先に立つ「ロシア・東欧雑貨直輸入店チャイカ」は、2012年にロシア最古の陶器ブランド「インペリアル・ポーセレン」のネットショップとして創業し、14年に店舗をオープン。マトリョーシカや白樺細工・ベレスタなど、ロシアの工房や職人から直接仕入れる工芸品をはじめ、東欧の文化が息づくかわいらしい雑貨が店内を彩る。17世紀後半、ロシアでは交易を通して独自のお茶文化が発展。卓上湯沸かし器・サモワールを囲み、果実の形を残したまま煮詰めるロシア風ジャム・ヴァレーニエやハチミツを食べながら紅茶を楽しむ、伝統的なロシアンティーのスタイルが築かれた。この文化を伝える紅茶や菓子の取り揃えも豊富で、15年から北海道産果実で手作りするヴァレーニエなど、自家製スイーツの製造を開始。20年、オリジナルブランド「函館サモワール」を立ち上げ、真珠色のハチミツに道産果物を合わせたスプレッド「フルーツハニー」を発売した。
道産果実と厳選ハチミツで函館の異国文化を伝える
ロシア人の夫・ワレーリー専務と共に店を立ち上げたパドスーシヌィー夏実代表は、大学時代のゼミナールをきっかけに独学でロシア語の勉強を始め、後にサンクトペテルブルク大学に語学留学。フリーの翻訳家、通訳としても活動するなど、長年ロシアと直接関われる仕事がしたいと考えてきた。元町に構えた店舗では観光客から「函館でなぜロシアのものを売っているの?」と聞かれることが多く、この土地ならではの異国情緒やロシア文化を伝えようと「函館サモワール」ブランドを考案。「フルーツハニー」は、ワレーリー専務の故郷・ウラジオストクで近年見かけるようになった、ハチミツと果物を合わせた一品で、日本でも販売したいと2018年から開発に着手。当初、黄金色のハチミツを使うとうまく果実の味や色を出せなかったことから、ロシアはもとより、世界各地のハチミツを取り寄せ試作。1年半もの試行錯誤の末、エスパルツェートという高山植物を蜜源とするキルギス共和国のホワイトハニーに辿り着き、道産果物の味わいや色が引き立つ5種類のオリジナルスプレッドを完成させた。
材が生きる手作りの味でロシアの文化に親しむ
リンゴ、ラズベリー、シーベリー、ハスカップ、カシス。「フルーツハニー」に使用する果物は、酸味や食感、鮮度にこだわり、減農薬・無除草剤に取り組む七飯町の「みやご果樹園」や帯広市のベリー農家「ときいろファーム」から厳選。製造を担当するワレーリー専務が、砂糖を使わず煮詰めた果実とホワイトハニーを低温で湯煎しながら丁寧に混ぜ合わせることで、無添加・非加熱の生ハチミツならではの風味や果実の粒感が生きる甘酸っぱい味わいに仕上げている。スイーツとしてそのまま食べるのはもちろん、バゲットに塗ったり、ヨーグルトに掛けたり、お湯に溶かしてホットドリンクにするのもおすすめで、「色々な使い方があるので、いつかサモワールを囲んだお茶会や料理講座で楽しみ方も広められたら。感染症の拡大が収束したら、バラライカ奏者のコンサートなど、ロシアの文化を取り入れたイベントも開催したい。函館とロシアを繋ぐ一助になれたら」と夏実代表。長年のロシアへの思いを結実させた空間で、開港から160年以上続く日露友好のバトンを受け継いでいる。
ロシア・東欧雑貨直輸入店 チャイカ
函館市元町7‐7
☎0138‐87‐2098
10:00~17:00
土・日曜、祝日のみ営業
P有り クレジットカード利用可
https://www.chaika-shop.com
ハコラク2022年3月号掲載