近海の恵みを生かす商品で全国、世界に北海道の味を発信
40年培った伝統製法で時代の波を越える商品を
「竹田食品」は、〝春夏秋冬 多彩な味を真心こめて〟をモットーに、生鮮珍味を製造する総合メーカー。創業者の竹田鉄夫さんは、函館市内で親戚が経営していた水産加工会社「布目水産冷蔵」に入社後独立。1984年に吉川町で「竹田食品」を創業し、東京都や札幌市にも営業所を置くなど事業を拡大。92年に現在の浅野町に社屋と工場を新設し、翌93年に創設した缶詰・レトルト商品を製造するグループ会社「寿フーズ」とともに、500種類を超える商品を製造販売している。全国からの注文を函館工場で一括して製造する同社は、出荷数トップ3の「なまらうめぇ!いか塩辛・いか明太」「工場直送いか塩辛」をはじめ、塩辛だけで、多い日には1日10tものイカを手作業でさばき、全商品におけるイカの使用量は年間1500tにも上る。塩辛に次ぐ主力商品の松前漬は、全工程を手作業で加工する「数の子松前」が、第6回全国水産加工総合品質審査会水産庁長官賞受賞や、2021年度から3年連続でモンドセレクション金賞を獲得。そのほか数々の松前漬商品が高く評価されている。海洋環境や漁獲量が変わっても商品を安定的に供給できるよう、外国産素材での商品試作にも取り組み、長年培った製法を礎に、刻々と変わる世界情勢に迅速に対応できるバラエティー豊かなラインアップを展開。本社併設の直売店では工場できたて商品など、ここでしか買えない一品を中心に販売している。
道南生まれの郷土料理で近海産のニシンを活用
松前漬は、元来保存食として乾燥させたスルメイカとコンブを塩で漬け込んでいた道南生まれの郷土料理。時代とともにしょう油ベースの味付けが広まったが、同社では冷蔵技術の向上により減塩を実現しつつ、塩で下味を付ける北海道特有の製法を継承。昨年2月に発売した「どさんこ松前漬」は、道南で漁獲量が増加傾向にあるニシンの活用方法を模索し、これまでのノウハウを結集して開発。現在日本で流通するカズノコの多くは卵がほぐれやすくやわらかな食感のヨーロッパ、大西洋産が主流だが、道産ニシンの魚卵ならではのパリッと粒立つ歯ざわりを地元の人にこそ知ってほしいと、近海産の高級カズノコを一本丸ごと使用し、試行錯誤の末、食感を生かしつつしっかりと味が染みる特製しょう油ダレを考案。スルメとマコンブも道産もので揃え、8℃に保たれた熟成室で1日3回カズノコが崩れないよう手でかき混ぜながら3日以上タレに漬け込み、手作業で袋詰め。製法、原料ともに〝道産子〟の魅力を詰め込んでいる。3代目社長の竹田寿広さんは、「北海道、函館という地の利がある場所で、近海産の素材を確保し全国に発信したい。近年は例年通り手に入らない食材も増えているが、その中でも今恵まれている食材をおいしく食べていただける商品作りをしたい」と、若手や女性社員の感性を積極的に取り入れた今までにない商品開発にも注力。アジア、海外へと販路を拡大し、北海道の味覚を広めている。
株式会社 竹田食品
函館市浅野町3‐10
☎0138‐43‐1110
問い合わせ/9:00~17:00
土・日曜、祝日定休(ほか休業日あり)
ハコラク2024年2月号掲載