道南・上ノ国町の大地が育む世界に誇れる日本ワインを
新たな産業を創出し桧山地区全体の活性化へ
2022年にオープンした「上ノ国ワイナリー」は、廃校となった上ノ国町の旧湯ノ岱小学校を活用し、体育館をワイン醸造所に、校舎をワイナリーショップと宿泊機能を備えたサテライトオフィスに改装した複合施設。運営会社の上ノ国開発は、愛知県の「株式会社アルファポイント」の代表として、特産品の6次化支援に取り組んできた丸山和之社長が、廃校の活用法や地場産品の6次産業化を模索していた上ノ国町長と、道内のイベント事業で親交があった縁で2019年に設立した。温暖化などにより道内にワイン造りに適した環境が整ってきたことを背景に、地域の協力を得ながら、町内にある約12haの畑でのブドウ栽培やワインの製造販売に着手。さらに醸造家の育成や産業・雇用の創出を実現できるワイナリーを目指し、泊りがけで就業体験ができるヨーロッパのワイナリーの人気に着目。滞在型の農業観光も可能にする施設を完成させた。今年4月には、ミュージシャンで俳優のGACKTさんとともに苗木からオーガニックワインを作る専用の畑「ガクト・ヴィンヤード」を新設。木古内町や江差町にも工場を置く予定で、上ノ国町を拠点に、各町の特色あるワインを生産し、地域の交流人口を増やしながら、桧山地区全体の盛り上げを図っている。
日本ならではの醸造で地域の可能性を広げる
シャルドネ、メルロー、ピノ・グリ、ピノ・ノワール…。ワイナリーでは、2万5000本ものさまざまな品種のブドウを栽培。フランス製の圧搾機やイタリア製の樹脂製タンクが並ぶ醸造所では、ワインに香りが移るよう発酵にオーク製の木樽を使用するなど、協定を結ぶイタリアソムリエ協会の醸造家のアドバイスを受けながら、細部にまでこだわりワイン造りを行う。同社初の醸造ワイン「上の泡 セイベル ロゼ スパークリング2021」は、生産量が減少傾向にある厚沢部町産のブドウ・セイベルを生かす製法を模索し、瓶内で二次発酵させるシャンパーニュ製法を採用。セイベル種ならではのドライな酸味と口当たり爽やかな辛口が特徴で、海と山、両方の食材に恵まれる上ノ国町のワインとして、肉料理や魚料理にも合う味わいに仕上げた。今年8月、北海道余市町のブドウ・ナイアガラ特有の香りが引き立つ微発泡の白ワイン「上の白」と山梨県産ブドウ3品種をブレンドした濃厚で深みのある赤ワイン「上の赤」を発売し、来年3月には「上の泡」の新ヴィンテージも発売予定。町内で栽培するブドウの一部は来年にも収穫が始まり、上ノ国産ブドウのワイン造りもいよいよスタートする。ワイナリーの立ち上げが長年の夢だった丸山社長は、「この場所はブドウ農家の方や醸造家を目指したい方にとっても夢のある場所だと思います。日本にある固有のブドウ品種や酒造りの歴史を生かして、ヨーロッパではやらないような製法も試し、海外でも認められる商品を作りたい」と語り、日本ワインの新たな道を切り開いている。
上ノ国開発株式会社
上ノ国町湯ノ岱243‐4
☎0139‐56‐1260(ワイナリー)
問い合わせ/9:00~18:00
無休 キャッシュレス決済利用可
ハコラク2023年12月号掲載