歴代の職人技を未来に伝え懐かしさと変化を感じる菓子処に
創業160周年を迎える「千秋庵総本家」は、秋田藩士・佐々木吉兵衛が、開港でにぎわう末広町近辺でフキの甘煮を立ち売りしたのが始まり。本店が宝来町に移転したのは80年ほど前。前の晩と翌朝の二段階で仕込む生地の「どらやき」や和洋折衷煎餅「元祖山親爺」など、大正期に4代目・松田咲太郎が築いた銘菓の礎の上に、製造場を西桔梗工場に移した現在に至るまで、歴代の職人から伝わる技やこだわりを積み重ねてきた。商品ごとに小豆の種類と炊き方を変える餡作りは一切の妥協を許さず、上生菓子では水仙の花弁を三角ベラで形作り、勢いと優しさが同居するウグイスの羽模様を「絞り」で表現するなど、五感に響く菓子作りを心掛ける。観光土産に人気のカステラ饅頭「函館散歩」や餡が苦手な人に向けた「七飯林檎フィナンシェ」といった新商品も開発し、昨年ハコビバ内にオープンした「千秋庵菓寮」ではカフェや実演販売も開始。伝統と変化、双方を楽しめる菓子処として、温故知新の精神で菓子作りに邁進している。
(ハコラク 2020年3月号掲載)
千秋庵総本家 宝来町本店
函館市宝来町9‐9
☎0138‐23‐5131
9:30~18:00
水曜定休
P有り
キャッシュレス決済利用可