腰椎(腰の骨)は履歴書
遠くにいる人の立ち姿、動く仕草を見ると、だいたい何歳位の人か、どんな職業の人か分かることがあります。立ち姿、動く仕草を決定するのは背骨です。背中の中の腰椎(腰の骨が5個あります)が特に大事です。胸椎、仙骨に比べ大きく動くことができるためです。
骨の話をします。健康な成人では、1年間に10%新しい骨に置き換わります。骨の細胞には、骨芽細胞と破骨細胞があり、骨芽細胞は新しい骨になり、破骨細胞は古い骨を除去します。骨への圧力増加があると、破骨細胞の骨を吸収する働きを抑制します。このため重力が少ない宇宙では地球上に比べ、破骨細胞がよく働き骨の吸収が多くなります。宇宙から戻った宇宙飛行士は骨量が回復するまで自力で立つことができません。リハビリ後、元の骨量に回復します。
骨に対し、圧力、牽引力が加わることで、その力の強さと方向に応じて骨が変形・発達します。よって、職業や運動により、決まった一定の背骨の変化がみられます。運送業・内装業・うなぎ屋など上半身を大きくねじる職業は、腰椎上部骨棘の変化、農業は上体の前屈を続ける職業で腰椎下部の骨棘の変化、一流のスポーツマンは上部から下部まですべての骨の変化、あまり体を動かさない高齢女性は腰椎上部の圧迫骨折、若年で過剰なスポーツをする人は下部腰椎の分離があります。
人間は直立歩行できる唯一の動物で、四足歩行から二足歩行へ体の構造が変化してきました。このため、歩行せず過度の安静や偏った運動のみでは背骨が変形することがあります。偏らず体全体をまんべんなく動かすことが非常に重要です。全身運動には歩行が最も適しています。反動を利用した起居動作では骨変化を生じます。正しい起居動作を学び、腰痛のない、安楽な日常生活を長く送れるように心掛けましょう。
(ハコラク 2022年7月号掲載)
略歴
昭和55年、岩手医科大学卒業後、同大附属病院麻酔科助手、昭和62年、函館五稜郭病院麻酔科、平成元年、函館脳神経外科病院を経て平成2年、やなづめ医院開院。日本麻酔科学会麻酔科専門医。
やなづめ医院
函館市日吉町3-43-20
☎0138-32-5000
■診療科目/ペインクリニック内科、リハビリテーション科、麻酔科(簗詰泰彦)
■診療時間/〈ペインクリニック内科〉8:30~11:30
16:00~18:00
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