肉と塩だけで作る道南生まれの燻製を全国に広めたい
安心、安全、手軽をテーマに体に優しい燻製を開発
「ワイズマンズFPL」は、〝安心、安全、手軽に楽しめる燻製〟をテーマに、厳選した肉と天然塩だけを原料にベーコンなどを製造する食品加工の研究所。2020年、2種類の燻煙室を備えた研究所を立ち上げ、発色剤や保存料などの添加物を一切使わず、おいしく体に優しい商品開発に取り組み、21年から「ビオベーコン」をはじめ、カモの独特の臭みを抑えつつ旨みを生かした「燻製鴨」、道産生乳100%使用のプロセスチーズを燻製した、ライトとハード2タイプの「スモークチーズ」の販売を開始。袋から出してそのまま食べられる「燻製ほっけスティック」や生タラコのような食感と燻煙の香りが口の中に広がる「生食感燻製たらこ」など、北斗市の水産加工業「株式会社海童丸」とコラボした海産物の燻製も手掛けている。加工した商品は、飲食店に卸すほか、研究所での直売や地域のマルシェに出店して販売。函館市杉並町「おしま産直マルシェ」、日吉町「はこだての自然派shop&茶房あい」、はこだて自由市場内「菊地商店」、七飯町「小野養鶏場里山楽房」などでも取り扱う。
無添加商品の製造を通して食の大切さを見直す
佐々木理所長が初めて燻製を作ったのは10年ほど前。食品添加物が使われた食品が苦手だったため、独学で肉と塩だけのベーコン作りを試みたのが始まりで、酒のつまみとして友人に振る舞い喜ばれたことで、燻製調理にのめり込むように。この味を広めようと商品化した「ビオベーコン」は、脂身の甘みが強く、肉々しい歯応えがありつつやわらかな肉質のフランス産豚バラ肉と、2年以上熟成させる天日結晶塩「あとれとわの塩」をはじめとした海水由来の天然塩のみを使用。ナラの木をベースにオリジナルブレンドするチップで燻煙したベーコンは、際立つ脂の甘みと濃厚な肉の旨みがシンプルに味わえ、和食の料理人からも重宝される逸品となった。また、製品化の過程で切り落とす部位を、幼稚園や子供食堂、飲食店に地域還元価格で販売するなど、フードロスの削減にも力を注ぐ。出身地の函館市戸井地区で猟師としても活動する佐々木所長は、上質な鹿肉の多くが流通せず廃棄される現状を変えようと、近い将来シカの解体施設を立ち上げて地場のシカ肉を使った燻製品の開発も目指している。
小さな声にも耳を傾け個性的で面白みのある商品を
「ビオベーコン」の加工は、すべて手作業が基本。直接塩をすり込む乾塩法で肉を塩漬けにし、旨みと水分を逃さないよう塩抜き直後に最大120度にもなる燻煙室で熱燻。その日扱う肉の大きさや硬さ、外気温、湿度の違いを見極め、燻煙時間や温度、塩分濃度を調整し、ジューシーさを残しつつ保存性も備える製法を確立させた。添加物を使用しない分、肉の中心部まで殺菌する温度管理や衛生面には非常に神経を使い、おいしさと安全性のバランスに納得いくまでは苦労も多かったが、「ベーコンが好きなのに添加物が入っていると口にできないという方に喜ばれた時は嬉しかった。たとえ万人受けしなくても、たった一人の声に耳を傾け、一つ一つハードルをクリアしながら、必要とする人に商品を届けたい」と、脂身が苦手な人のために鶏ササミの燻製を考案するなど、新商品の構想も膨らませている。「燻製やベーコン作りに完成形は無いので、頑張った分だけおいしさを追求できる。いつか道南発の面白い商品があるよと、全国の人にも知ってもらえたら」と、佐々木所長の探求心は絶えない。
Wise man’s FPL
北斗市七重浜2‐33‐49
☎050‐8885‐4680
※研究所で購入する場合は要電話連絡
不定休 P有り
https://www.wisemansfpl.com/
ハコラク2023年2月号掲載