新しい価値観のお菓子作りを通じ函館全体を元気に
登場以来愛され続ける函館の観光土産
厚沢部町産の白いサツマイモ・黄金千貫を主役にした菓子、メークインを使った総菜などを製造する「カドウフーズ株式会社」。体に優しく食べて幸せな気持ちになる函館土産を作り、地域活性化につなげようと嘉堂聖也社長が2010年に創業した。嘉堂社長は「創業当時、函館土産といえば海産物が多かった。地元の食材を使い、地元の製造会社が手掛ける、函館にふさわしいお菓子を作りたかった」と、黄金千貫で作るスイートポテトと生クリームを求肥でふんわり包む大福菓子「はこだて雪んこ」を開発。地元の企業と連携して限定フレーバーも次々と手掛け、「雪んこ」をベースにしたソフトクリームやプリン、非常食にもなる総菜「もう、ゆでちゃった」「北海道名産あげいも」など数々のヒット商品を生み出してきた。製造は熟練スタッフによる手作り。手作業でしか出せない繊細な風味を逃さないのはもちろん「自分たちで手を掛けたからこそ生まれる、商品への愛情を大切にしたい」と、製造、販売に携わる社員たちの思いを一つにしている。
地元農産物を使い手作りの良さを生かす
2019年に販売をスタートした「白い半熟スイートポテト」は、同社が作るスイートポテトのおいしさを知ってもらいたいと、長年、あたためていたレシピをブラッシュアップして開発。仕入れてから数カ月かけて追熟させた黄金千貫を蒸して手作業で丁寧に裏ごしし、素材の良さがダイレクトに伝わるよう、添加物をほとんど入れず函館牛乳、砂糖、バターを加えて味を調えペースト状に。焼き上げてから一晩置いて引き締めたスイートポテトに包丁を入れ、中段に生クリームを挟み、軽い食感に仕上げている。しっとりとしてやわらかく、口の中でサッと溶けていくような舌触りが特徴で、やわらかすぎて崩れないように水分量の調整に苦心したという。農林水産省主催の食のコンテスト「フード・アクション・ニッポンアワード2020」の入選100産品に、道南で唯一選定。嘉堂社長は「現場スタッフのやりがいになった」と笑顔を見せ、好成績を追い風に販路拡大にも力を入れる。地元では同社1階の直売所のほか、空港、観光施設の土産店で販売し、人気を集め始めている。
地域経済の好循環を目指しさまざまな活動に注力
黄金千貫は、主に芋焼酎の原材料として使われており、ホクホクとした食感と程良い糖度が菓子の原料としても最適だという。北海道で生産を手掛ける農家は少なく、道南では主に芋焼酎「喜多里」の原料として厚沢部町で作付けされている。芋焼酎「喜多里」を製造している札幌酒精工業が手掛ける農業生産法人とパートナー企業として連携し、品質が良くてもサイズが規格外などで流通に出せないものを仕入れ、加工・商品化して付加価値をつけることで生産者へ還元、食品ロス削減にもつなげる。函館の魅力を伝え観光客に足を運んでもらおうと、全国の百貨店などの物産展にも積極的に出展し、地元の認知度アップに尽力している。また、新型コロナウイルスの影響による、離職や所得減少で困窮する世帯が増えたことを受け、子供たちを支援しようと、野菜の寄付や家庭で不要になった文房具、衣服を回収し提供する、SDGs(持続可能な開発目標)を念頭に置いた取り組みをスタート。地域のコミュニティーを確立させ、「人と人とのつながりを築き上げていきたい」と広い視野を持って挑戦を続けている。
カドウフーズ株式会社
函館市追分町1‐25
☎0138‐62‐6077
直売所:9:00~17:00
無休
https://www.kafukudokitchen.jp
ハコラク2021年12月号掲載