創業者のモットー“アイデア勝負”を掲げ食の創造に力を注ぐ
培ったノウハウを大切に 消費者目線で進化を続ける
1989年創業の「株式会社丸心」は、函館名物のイカ、北海道産のホッケ、ニシンなど厳選した海産物を原材料に、生鮮加工珍味を製造、販売している。創業者である故・佐々木義久社長が消費者の立場に立ち、従業員と一緒にさまざまな角度から研究を重ね、時代のニーズに合わせた商品づくりを追求。その姿勢と「毎日が勝負、アイデアで勝つ」という思いを、妻で3代目の佐々木恵美子社長が引き継ぎ、開発スタッフを中心にアイデアを練り、また消費者のリクエストに応える形で今までに生み出してきた商品は約200点。歯応えのあるイカの耳を使用し高いリピート率を誇る「いか塩辛 飲兵衛」をはじめ、ニシンに玄米黒酢を利かせた「にしん菜の華漬」、麹に紅鮭を漬け込んだ甘口な「紅鮭北海漬」など北海道ならではの味が楽しめる豊富な品揃えだ。開けたらすぐに食べられる手軽さも好評で、道内のスーパーマーケットやJR函館駅の土産店に並ぶほか、全国各地の百貨店やスーパーの物産展やフェアでも販売。家庭の食卓に彩りを添える総菜として、広く親しまれている。
断念していた商品化に成功 テレビ番組が人気を後押し
切込みとは生のニシンやサケを細切りにし、塩と米麹で漬け込み熟成させる北海道や東北の郷土料理。「ほっけ切込み」は義久社長が亡くなる前に商品化に着手したものの、麹菌を使う発酵食品ゆえに、国が定める安全基準内に麹菌の発生を抑えつつ、どう味を引き出すかがネックとなり開発が難航、暗礁に乗り上げていた商品だった。再開発は恵美子さんが社長に就任した5年ほど前、「久しく作っていなかった新アイテムを」と考えていたところ、営業本部長が着目したのがきっかけ。「安全に食べていただくために」と試行錯誤を繰り返し完成した「ほっけ切込み」は、丁寧に下処理したホッケを約2日間塩麹で漬け込んだもの。麹の優しい甘さと絶妙にマッチするホッケの旨味がクセになると口コミで地元にじわじわと広まり、テレビの情報番組で取り上げられると、かねてからの麹ブームも後押しとなり、全国からも注目を集める一品に成長。恵美子社長は「そのまま食べてもおいしいですが、お茶漬けもおすすめです。いろいろな食べ方を試してみて下さい」と味に自信をのぞかせる。
会社に届く声に耳を傾け 柔軟な対応で今後に生かす
恵美子社長が「従業員は家族同様の存在です。日々一緒に成長していきたい」と、どんな小さな課題もその日のうちに解決出来るよう、風通しの良い労働環境を心掛けている。新商品が完成間近になると全員で試食して意見交換を活発に行い、また親しい顧客にも味を確認してもらい感想や意見を取り入れ、より良い製品づくりへとつなげていく。「今までにないユニークなものを」と若い世代向けにバジルやカレー味を利かせた洋風の味付け、懐かしさを覚える昔ながらの味のリバイバル、またコロナ禍の〝巣ごもり需要〟を見込んだ商品開発など、常に挑戦を続けている。パッケージもブラッシュアップし、内容量も業務用や土産用のほか、一般家庭で一度に食べ切れる小分けサイズも加えた。「創業時代から今に至るまで、お客様に支えられてここまで来ました。その信頼に応え喜ばれる商品を作っていきたい」と、消費者一人ひとりの声に耳を傾けて個々のニーズにも出来るだけ応える。商品づくりに掛ける従業員のチームワーク力と臨機応変な対応が、地域で広く愛されるゆえんだろう。
株式会社 丸心
函館市西桔梗町9‐2
☎0138‐48‐6788
※本社で購入する場合は要電話連絡
http://www.kaisenclub.jp/
ハコラク2021年6月号掲載