徹底した手作り製法を守り続け、誉れ高い北海道の味に
豊かな海の幸の魅力を時代に合わせた商品で発信
北海道の山海の幸を生かした商品を展開する食品加工メーカー「誉食品」は、1982年に「大富食品」として創業。元々のメイン事業は昆布巻きの製造で、87年から松前漬けを作り始めるとその味が評判となり、次第に昆布巻きに代わる主力商品へと成長を果たした。現在は上質な一本羽の数の子を贅沢に使う「数の子松前漬」から「切干し大根松前漬」といった商品まで、約20種類もの松前漬けを手掛けるほか、塩辛とはひと味違う国産真イカの味噌漬け「こく旨みそいか」など、自然に近い味わいと昔ながらの手作り製法にこだわる数々の商品で、時代に寄り添いながら北海道の食の豊かさを伝えてきた。中でも客からの要望に応えて90年代に製造を開始した、紅鮭をこうじ漬けにする生珍味「紅鮭の石狩漬」やこれにイクラをトッピングした「紅鮭親子ルイベ」は函館市内の品評会でも高く評価され、2017年に誕生した「紅鮭山わさびこうじ漬」は、今年6月、函館圏優良土産品推奨会において特に品質、郷土性などに優れた観光土産品として函館国際観光コンベンション協会会長賞を受賞した。
手抜きを一切しない製法で量産よりも品質を追及
脂乗りの潤沢さや鮮やかな身色を見極め厳選する紅鮭、米を蒸すところから発酵具合まで微調整を重ねた米こうじ…四半世紀に渡り味を磨いてきた「紅鮭の石狩漬」に、北海道産山ワサビのしょう油漬けを添えた「紅鮭山わさびこうじ漬」は、爽やかな辛味が米こうじの甘さを絶妙に引き締め、2cm角のサイコロ状にカットされた紅鮭をかみ締めるたび、コクや旨味が口いっぱいに広がる。味の染み込みやすさなどを研究し10年以上かけてたどり着いた形状は、手切りでしか実現出来ないものに。魚の臭みをしっかりと取る3日間の1次漬け込みから、米こうじを合わせ手作業でかくはんする2次漬け込みまで、熟成期間を含め完成まで1週間の時間を要し、手間暇の多さから大量生産が難しいという。時には全ての注文に対応しきれないこともあるというが、熊谷社長は、「手抜きした商品は絶対に売らない。とにかく一つひとつの工程で、丁寧な仕事をすることが大切」とニーズに応えるべく工場の拡張を図りながら、品質を守ることを何よりも重視している。
確固たる信念を持つ経営が誰にも真似できない味を築く
工場長をはじめとする紅鮭をさばくスタッフは、全員が和食店やホテルでの料理経験を持つ職人集団。しっかりとぬめりや鱗を洗い落とした何十匹もの紅鮭を、自前の包丁を刃先まで巧みに操り次々と三枚におろしていく。脂が乗った生鮭は扱いが難しく手際よく処理するには高い技術が求められ、仕上げにピンセットで大量の小骨を隅々まで取り除く工程は、見ているだけでも気が遠くなる作業だが、「手作りにこだわることがうちの最大の売り。面倒くさいことを大切にすることが味の差になっている」と、例え製法を真似たとしても再現できない独自の味を築いてきた。長年のこだわりが詰まった商品は決して安価ではないが、「価格で競争することなく味を認めてくれるお客様と取り引きしてきたからこそ長く続けてこられた。味には絶対の自信があるので、きちんとした商品を作り続けることが最大のテーマ」と会社で直売を行うほか、信頼を寄せる卸し先と通信販売を中心に商品を発信。これまでの足跡に確固たるプライドを持つ経営が、唯一無二の味を育てている。
株式会社 誉食品
函館市西桔梗町853‐2
☎0138‐86‐9291
8:30~17:00
土・日曜、祝日定休
P有り
ハコラク2020年11月号掲載