豆腐の価値向上を目標に今までとは一線を画す新ブランド
北海道きっての老舗メーカー 豆腐業界の発展にも尽力
「やっこさんとうふ」で親しまれている日乃出食品は、1929年創業の北海道きっての老舗豆腐メーカー。松前町で初代・工藤正蔵さんが「日乃出屋」の暖簾を掲げたのが始まりで、1960年、函館市海岸町に函館支店を開き、翌年分離独立して同支店は「日乃出食品株式会社」として再出発。1962年に梁川町、1966年に富岡町へと工場を移転し、2006年、富岡工場、松前工場の機能も集約した本社工場を現在の場所に新設した。その間、開封まで鮮度を保ち長期保存が可能な完全包装「充填ブロー豆腐」を開発し、回転式高速充填機を考案して生産性を向上、2004年には消泡剤無添加、にがり100%の充填ブロー豆腐「やっこさんとうふ」の商品開発にも成功。また、4代目の工藤英洋社長は、理事長を務める函館豆腐油揚組合(加盟7社)でのプロジェクト「トウフューチャー」にも取り組み、豆腐店自らが栽培した大豆で豆腐を製造し、節分に合わせて販売するなど、地元豆腐店の活性化にも尽力している。
風味豊かな手作り生豆腐 シェアしたくなるおいしさ
「ジモ豆腐ソイア」は昨年立ち上げた新ブランドで、ソイアはイタリア語で大豆を意味する。北斗市産「ゆうづる」や「とよむすめ」など、こだわり抜いて厳選した地元大豆を使用する少量生産の生豆腐で、ラインアップはスタンダードな「よせ」「ざる」「もめん」「きぬ」「あげ豆腐」「豆乳」のほか、はちみつ、コーヒー、ゴマ味の豆腐スイーツなど。今年6月開催の「第5回全国豆腐品評会北海道・東北大会」道ブロックに出品した一番人気の「よせ」(180g378円)が金賞を受賞するなど味の良さは折り紙付き。一般的な豆腐と比べて約2倍もの量の大豆を使い、道南産大豆の長所を生かすため製造工程は全て手作業。季節や状況に合わせ、大豆の浸漬具合、炊き具合を見極めて調整し、自然豊かな横津岳の天然伏流水で作る豆乳を、熊石の海洋深層水から製造するにがりで凝固させる。加熱殺菌していない分、旨味が逃げず、口に含んだ瞬間とろけるような滑らかな舌触り、鼻をくすぐる大豆の豊かな香りと濃厚な甘さが楽しめる。高級感あるパッケージはとっておき感を演出し、プチ贅沢や土産にもぴったりだ。
移動販売で出来たてを届ける 地元で浸透じわり
豆腐店を取り巻く現在の状況は厳しく、工藤社長は「厳しい価格競争の中で製造に携わる自分たちが豆腐の価値を下げてしまった傾向もある」と危機感を募らせ、新ブランドの立ち上げを決意。「地元に良い大豆があって、それを製品加工して消費者に伝える技術がうちの工場にはある。ならば活用すべきでは」との思いもあった。「豆腐への思いやこだわりを、直接お客様に説明しながら販売したい」と、試食し味に納得した上で購入してもらえる移動販売車での対面販売が主。曜日ごとに方面を決め、facebookでルートや時間を順次発信しながら、函館市、北斗市、七飯町を巡回。各種イベントにも積極的に出店している。スタートから1年が経過した今、その思いは着実に実りファンが増加。工藤社長は「全国豆腐品評会道ブロック金賞受賞に、お客様が〝やっぱりね〟と喜んでくれたのが何よりもうれしい」と消費者から寄せられた声に顔をほころばせる。今後は、ブランドの魅力を武器に、情報発信にさらに力を入れ、長く愛される地元ブランドへと成長させ、豆腐の価値向上を図るのが目標。工藤社長はますます熱意を燃やしている。
日乃出食品株式会社
七飯町緑町3‐2‐1
☎0138‐64‐0853(代)
移動販売/火~土曜10:00~17:00
問い合わせ/Jimo豆腐Soia事業部
☎080‐6735‐1487(販売車両直通)
ハコラク2019年9月号掲載